日本の奨学金制度は、学生にとって学業を支える重要な手段だが、その実態には多くの課題がある。特に、貸与型が中心であることや情報の不透明さが、学生にとって負担となり、学業や将来のキャリアに大きな影響を与えていると言われている。
筆者自身も奨学生であることから、今回は、自身の経験もふまえ奨学金制度に関して3つの視点で掘り下げていく。
1. 貸与型奨学金について思うこと
日本の奨学金制度の最大の問題は、貸与型が主流であることだろう。これは、実質的には「借金」であり、学生は卒業と同時に数百万の負債を抱えることになる。キャリアの選択肢が狭まる可能性もあり、特にリスクのある起業やフリーランスの道を選ぶことは、奨学金の返済を考えると非常に困難だ。
欧米諸国では、優秀な学生や経済的に困窮している学生に対して給付型奨学金が広く提供されており、学生が負債を抱えることなく学びに専念できる仕組みが整っている。日本でも、こうした給付型奨学金の拡充が急務である。貸与型奨学金が若者の将来に与える影響は大きく、返済のプレッシャーがキャリア選択の自由を奪うことは、社会全体にとってもマイナスだ。
というのが世の一般的な考え方であろう。
私は、学生の大半は奨学金を借りてまで大学に行く必要はないと考えている。社会に出たことがない身でこれを言い切るべきか定かでないが、大学と社会の一番の違いは「興味のある分野に関する学習のしやすさ」であろう。そのため、学問や研究に励むために大学に通う人が奨学金を借りることには賛成であるし、厳正な審査のもとで給付型の奨学金の拡充も図るべきだと考えている。
しかし、私は、多くの学生が大学に行く理由は将来への不安を払拭するためだと感じている。今の時代、良い企業に属さなくてもお金を稼ぐ手段は豊富にあるし、少し検索すれば大量の情報を得られる。これを言うと、正社員とフリーランスや起業では安定感が違うといった指摘がある。
だが、大学で勉強したくない、独立のための知識やスキルを習得するのもめんどくさい、このような人が仮に大学に進学したとして、私はその人が給付型の奨学金にふさわしいとは思えないし、卒業後の進路も期待できない。かといって、そのような人が貸与型の奨学金に対して不平不満を漏らしていたとして、それに耳を貸す者がいるのだろうか。