◆インデックスを上回る成績を残す「ICA戦略」とは何か?
みずほ銀行の売れ筋ランキングの第2位になった「キャピタル・インベストメント・カンパニー・オブ・アメリカ ICA」は、米キャピタルグループが1934年に最初に設定した投資信託である「ザ・インベストメント・カンパニー・オブ・アメリカ(ICA)」の投資戦略で運用するファンドだ。米国の株式を主な投資対象とし、投資する銘柄を選定する際には、その企業の成長性と配当に注目している。その配当については、足元の配当性向※ということだけでなく、継続的に配当を実施する力があるかどうかという企業の質も吟味している。いわゆる成長株ファンドではなく、企業の本質的な価値にも着目した銘柄選定を行っているところが特徴だ。そして、成長株に期待される株価上昇と、安定的な配当収入を得ることによって資産を膨らませている。
※その期の純利益の中から、配当金をどれくらい支払っているかを%で表したもの。
実際に1930年代の大恐慌から脱する時代からの運用実績があるICA戦略は、第2次世界大戦、朝鮮戦争やベトナム戦争の時代を経て、オイルショックやプラザ合意の変転をくぐり抜け、インターネット時代の到来という時代の変遷を経験している。この間、米国株式の代表的な株価指数を安定的に上回る投資成果を残し、ICA戦略の設定時から2023年9月末までの期間で、米国株式インデックスは1万300倍になったことに対し、ICA戦略(費用控除前)は4万8400倍になった。長期の運用実績があり、かつ、その長い運用期間においてインデックスを上回る成績を残していることには、運用に対する信頼感や安心感が持てるだろう。
ICA戦略は成長株だけに投資するのではなく、そこに配当の要素も加えて、安定的に配当が継続できる企業も投資対象に加えている。史上最高値を更新している現在の米国株式市場では、景気の減速という現実を踏まえて、株価の先行きが危うい銘柄と、引き続き現在の株価を維持できる銘柄に分かれるところだろう。その見極めができる判断能力こそが、今の市場で最も必要とされていると考えられる。90年を超える歴史に裏付けされたICA戦略への期待が高まるのはもっともなことだ。その信頼に応えられる運用成績になるのか、同ファンドの今後のパフォーマンスに注目していきたい。
◆市場環境の大変化に対応する新ファンドに注目
9月に米FRBが利下げに転じたことは、2023年に実施されたインフレ対応策としての急速な金融引き締め策の終焉と大転換を意味する。異常なインフレ(物価上昇)を抑えるために主要国の多くが急速な金融引き締めを行った。米国はゼロ%だった政策金利の水準を2年足らずの間に年5.25%~5.50%にまで引き上げることによって、2022年には年8.3%の水準にまで上昇してしまっていたインフレ率を、2024年7月時点で年2.9%の水準にまで低下させ、約3年ぶりに2%台の水準に下げた。今後、インフレ率が3%を超えて高まる心配がなければ、依然として米国経済の成長率と比較して高過ぎる政策金利の水準は徐々に引き下げられていく見通しにある。
一方で、インフレ率の低下は、経済活動が鈍化していることのシグナルでもあり、成長企業が前年を上回る成長を確保することは厳しくなっている。市場全体の動きを捉えることを目的としたインデックスファンドの人気が伸び悩み、選別投資をするアクティブファンドに人気が出始めているのは、市場の流れの変化を映した動きだろう。
中でも、2023年の成長株が市場の中心であった頃に、成長株の割高さへの警戒感をもって企画・設定された新しいファンド群が売れ筋として台頭し始めている。世界のさまざまな債券に投資する「ブラックロック・フレキシブル・インカム・ファンド/BINC(為替ヘッジなし/資産成長型)」、世界の市場から優れた銘柄をピックアップする「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンドDコース(毎月決算・予想分配金提示型・為替ヘッジなし)」など、投資家のニーズを満たす運用成績を実現できるのはどのファンドになるのか? 設定からの期間が比較的短いファンドの人気はまだ定まったものではない。今後、どこに人気が収れんしていくのか注目していきたい。
執筆/ライター・記者 徳永 浩