さらにもう一点挙げるなら、株主平等の原則にも反します。よくあるのは、100株以上を持っていれば一律に1000円のクオカードを進呈するというパターン。この場合、1000株持っていても100万株持っていても、もらえるのは1000円です。つまり、明らかに零細な個人投資家だけをターゲットにしているわけです。一方、大株主にほとんどメリットはありません。

ちなみに我々が運用しているのは外国籍のファンドなので、日本企業の株を売買する際には日本国内のカストディアンと呼ばれる金融機関と契約し、有価証券の保管などの業務をお願いしています。我々のファンドが保有する株式について、株主宛ての連絡は、このカストディアンに来ます。

我々のカストディアンは、株主優待の受け取りを一律に拒否しています。ちなみに十数年前に私が所属していた会社で運用していたファンドのカストディアンは外資系銀行の東京支店でしたが、ここは受け取った株主優待をすべて寄付していました。

つまり、どれだけ大量の株を持っていても、国内の株主は100株保有の株主と同じ1000円のクオカード、海外の機関投資家は株主優待としてはクオカードどころか1円ももらえません。たいへん理不尽な制度ではないでしょうか。しかも現金に近いものを配っているとすれば、ほぼ配当金と同じであり、なおさら株主平等の原則に反しているように思います。

もっとも最近は、以上のような不合理が理解され始めたためか、金券等を配布する株主優待を取り止める企業が増えています。一方で自社の製品、サービスを提供する優待は増加しているかもしれません。やはり安定的に保有してくれる株主を増やしたいなら、事業と見通しをきっちり説明して理解と賛同を得ることこそ王道でしょう。

●第4回は【モノ言う株主「親子上場は原則廃止」、株主軽視の親子上場をなくすための3つの提案】です。(10月12日に配信予定)

「モノ言う株主」の株式市場原論

 

著者名 丸木 強

発行元    中央公論新社

価格 924円(税込)