実はITも、正社員の賃金伸び率が低調な業界は?
正社員と一口に言ってもさまざまな業種があります。人手不足の業種ならば人材確保のために賃金を上げるでしょうから、賃金の伸びも高そうなもの。実態はどうなのでしょうか。
調査結果では、前年同期比で募集賃金指数の伸び率が高いのは「製造業」「宿泊業、飲食サービス業」「卸売業、小売業」でそれぞれ4%程度。新型コロナ感染拡大で業績不振に陥った宿泊業、飲食サービス業は他の業種に比べて伸び率が低調で、一時はマイナスに転落。しかしコロナ収束が見えてきた2021年後半から徐々に回復し、円安によるインバウンド需要も追い風となり、継続して高い伸びを示しています。
一方でITエンジニアなど「情報通信業」は、2024年前半から前年同期比でマイナスが続いており意外と低調。また「物流の2024年問題」がメディアでも大きく取り上げられた「運輸業、郵便業」も人材確保のためか、2024年前半から賃金の伸びが顕著だったものの、2024年半ばで頭打ちになり、6月に引き続き7月も大きく減少。賃金の伸びが一時的だった可能性を示唆する結果となりました。
「人手不足」叫ばれる、医療・福祉業界、なんと求人の伸びはマイナス
続いて求人数はどうでしょうか。人手不足の業種ならばたくさん求人を出すでしょうから、求人の伸びも高そうなもの。調査結果では、前年同期比で求人数指数の伸び率が高いのは「卸売業・小売業」「情報通信業」で40%前後。卸売業・小売業は新型コロナ感染拡大期や2023年中盤はマイナスに転落したものの、2023年後半から急上昇。また情報通信業は2021年に入って急上昇し、その後は他の業種に比べて安定的にプラスで推移しています。
宿泊業、飲食サービス業は新型コロナ感染の収束が見えてきた2022年頃、運輸業、郵便業は「物流の2024年問題」を翌年に控えた2023年頃に、それぞれ求人数指数が前年同期比で80%を超えるなど、業種によって急速に人手不足が深刻化するケースも。
そんななかで、求人数指数が前年同期比で唯一マイナスなのが「医療、福祉」。新型コロナ感染拡大期は一時60%程度まで求人が伸びましたが、2023年半ばにマイナスに転落。医療・福祉業界と言えば、少子高齢化に伴う需要の増加などから、慢性的に人手不足というイメージもありますが、意外に求人の伸びは低いようです。感染拡大に伴い、人手がひっ迫したコロナ禍という特殊要因の反動が現れているのかもしれません。