2024年度後半の投資環境見通し:サマリー

焦点は米景気の健康状態 判定までボラティリティは高止まり

一定水準までの米国景気の軟化は、インフレ抑制と利下げの自由度を高めるとの見方から、株高・債券高となる傾向があります。今年5月から7月までは正にそうした展開でした。ところが、景気軟化が一定水準を超えると、マーケットは「景気後退」を懸念し始め、株安・債券高の反応に転じます。8月1日発表のISM製造業指数と2日の雇用統計は、一定水準を超える軟化、と見做したようです。マーケットが「景気後退」を懸念し始めると、その懸念が払しょくされるまでには、相当量の“良い景気指標”が必要となります。これまであまり重視されてこなかったような景気指標にもマーケットは一喜一憂するようになり、ボラティリティ(*1)が高止まりすると予想されます。

現時点で米国の景気後退入りが差し迫っていると考える根拠は乏しいと判断しています。ただ、米国景気のモメンタム(*2)が鈍化傾向にあることは事実です。りそな景気先行指数を構成する7つの米国指標を見ると、4月以降、過半の指標が3ヵ月前値を下回っています。もっとも、いずれの指標も急速な悪化は示しておらず、概して足踏み状態といえます。この先FRBが適切に利下げに動くことで金融環境が緩和され、景気後退は回避されるとみています。ただ、インフレ再燃懸念が残るためマーケットが期待するような50bpを超える大幅利下げや緊急利下げの可能性は低いと考えられます。FRBがマーケットセンチメントを急速に改善させる救世主になることは期待できず、米国株市場は、実体経済の回復を確認しながら、徐々に下値を切り上げる展開が予想されます。

*1:ボラティリティ=株価や為替の価格変動率の大きさ
*2:モメンタム=相場の勢いを判断するテクニカル指標


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