米国景気の健全度を点検

米景気後退のシグナル点灯 労働市場の実態を検証

米国の景気後退懸念が急浮上し、8月の株式市場は大荒れのスタートとなりました。2日に発表された7月米雇用統計が景気後退判定基準の『サーム・ルール』に抵触し、不安が一気に広まった格好です。サーム・ルールは失業率が直近の基調から大きく跳ね上がるタイミングを割り出します。7月失業率が前月の4.1%から4.3%へ急上昇したため、シグナルが点灯しました。この基準は失業率の急上昇を景気後退状態の証拠とみなすものです。はたして、現在の米国経済は景気後退入りしたのでしょうか。

過去のシグナル点灯時は、概ねその1四半期前に景気後退が始まっています。しかし現在は、1四半期前の4-6月期の米実質成長率が前期比年率+2.8%と、FRBの潜在成長率予想とみなされる+1.8%(FOMC参加者の長期実質成長率予想、中央値)を明確に上回る高成長となっています。また、アトランタ連銀のGDPナウ(足元までの経済指標でGDPを予測するモデル)によると、8月初時点の7-9月期実質成長率推計は+2.9%(前期比年率)です。通常、景気後退期は成長率がマイナスに落ち込むため、GDP基準では景気後退入りの可能性は否定されます。

雇用についても、7月非農業部門雇用者数が前月比11.4万人増と、ペースは減速しているものの雇用拡大が続いています。また、現在は移民労働者の増加や働き手の復帰等、労働人口の拡大というプラス要因も失業率上昇の一因となっています(図表2)。

とはいえ、純粋な失業者も緩やかに増加しています(図表2)。現時点で景気後退状態であるとは考えにくいものの、今後の景気悪化リスクが高まっている可能性には留意が必要と考えます。

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