従業員の資産形成に積極的な企業が選ばれる時代に

企業型DCがある企業では、従業員が適切に資産運用できるように投資教育を継続して行うことが努力義務として課されています。ただし調査からは、8割の企業がその教育を行っているものの、従業員の側で受けたことがあると回答したのはわずか1割と、双方の認識に大きな隔たりがあることが明らかになっています。

出典:企業年金連合会「2021(令和3)年度 確定拠出年金実態調査結果(概要)(2023年3月公表)」、年金シニアプラン総合研究機構「厚生年金の加入者における企業型確定拠出年金とiDeCoに関する調査(2021年5月調査)(2022年2月公表)」、確定拠出年金教育協会「企業型確定拠出年金(DC)担当者の意識調査2022全体報告書(2023年1月公表)」、確定拠出年金・調査広報研究所「第19回企業型確定拠出年金制度に関する調査(2022年8月公表)」より金融庁作成

このギャップを埋めていくことが喫緊の課題であることは明白です。企業型DCがある企業の中でも意欲的に継続投資教育を実施しているところでは、従業員が企業型DC加入者ウェブサイトへアクセスしたり、マッチング拠出(会社による掛金にプラスして従業員自身が掛金を上乗せすること)が増えているといった、従業員の資産形成への前向きな行動が見られます。

日々の仕事に忙しい中でも、自らの資産形成に積極的に動くか否かは企業による継続教育の有無によるところが大きいことの証左といえそうです。

今年4月に金融リテラシーの向上に向けて金融経済教育推進機構(J-FLEC)が設立されました。機構の目的は「国民一人ひとりが描くファイナンシャル・ウェルビーイングを実現し、自立的で持続可能な生活を送ることのできる社会づくりに貢献していく」ことであると同3月の閣議決定 で示されています。

すでに2023年3月期から有価証券報告書への人的資本に関する開示が義務付けられています。資産形成支援をはじめとするファイナンシャル・ウェルビーイングに関する取り組みについて、その積極的な開示は内外から望まれる最重点課題の一つといっても過言ではないでしょう。

国を挙げての取り組みは着実に進んでいます。選ばれる企業の条件としてファイナンシャル・ウェルビーイングがスタンダードとなる時代は、そう遠くないのかもしれません。