フランクリン・テンプルトン・ジャパン
代表取締役社長 髙村 孝氏
 

運用のコアには米国地方債や戦略が豊富なオルタナティブを

――まずは、グローバルの金融市場を取り巻く状況について教えてください。

これまで以上に難しいマーケットになってきたという印象です。世界の経済成長率はコンセンサスを下回りインフレ率は高止まりすると想定していますが、地政学的リスクの顕在化やドル円相場の変動などさまざまな不確実要素が山積しており、今後の地合いを見通すのは容易ではありません。

とりわけ重要なトピックは、国内外の金利動向です。日銀の金融政策修正によって日本国内が「金利のある世界」に変わっていく一方で、米国では段階的に利下げが進む見込みです。投資家への影響としては、株式のボラティリティが高まって不透明さが増してくる中で、着実に利回りが確保できる債券の安定感が際立つようになるのではないかと見ています。

――複雑なマーケットの中で、貴社はどんな投資先に注目していますか。

大きく分けて、米国地方債とオルタナティブ資産の2つが挙げられます。

まず米国地方債は、堅実にリターンを稼ぐためのいわば「運用の基本線」としてお勧めできます。一般的に投資適格社債よりもスプレッドが大きく、高止まりする為替ヘッジコスト以上の利回りが期待できるからです。またデュレーションが長期化しやすい特性上、昨今のような長期金利が低下する局面では価値が高まり、キャピタルゲインの獲得も望めます。さらに、マーケットが厚く信用力も高いという特長もあります。

オルタナティブ資産については、プライベートエクイティやプライベートデット、不動産、ヘッジファンドなど多くの種類があり、投資家のニーズに合わせて多様な戦略をカスタマイズできるのがメリットです。

もっとも、戦略を選ぶ上で大切なのはリスクの解像度を上げておくことです。「どのようなリスクをとるのか」「そのリスクをどこまで許容できるのか」といった要点を明確にできているのであれば、インド株やテックファンドのようなハイリスク・ハイリターンな投資先を選ぶこともできるでしょう。そして目先のリターンに一喜一憂するのではなく、長期的な目線で投資する姿勢も、市場の不確実性が増す中でこれまで以上に重要になってくると思います。

傘下の11社が等しく継承するFTグループの「長期投資DNA」

――長期目線での運用は、まさに貴社の強みになっていると聞きます。

長期目線で運用する姿勢は、いわばFTの「企業文化」として根付いていると思います。1947年の創立以来多くの運用会社を傘下に迎えてともに成長して来られたのは、グループ各社の単年度の業績や一時の流行にとらわれず、グループ全体で収益のバランスをとってきたからです。またFTの4代目となる社長兼CEOを務めるジェニー・ジョンソンに経営哲学を聞いたところ、「何より優先しているのは、『子や孫など次世代に恥ずかしくない会社にするため何を成すか』という長期的スタンスだ」との答えが返ってきたのも印象的でした。

長期目線の運用はFTの資本構造にも支えられています。FTは発行済み株式の多くをオーナー一族で保有しているため、ニューヨーク証券取引所の上場企業でありながらも、毎年の決算に大きく左右されることなく経営できるのです。つまりオーナー企業の柔軟性と上場企業の資金力を併せ持つ、ハイブリッドな経営と言えるでしょう。

以上のように、長期目線での運用力強化に専念できる体制がFTの強みですし、他社と大きく差別化できるポイントですね。