コスモを1000億円で持分化 水素で協業を深化

水素事業の強化はM&Aも活用します。

岩谷産業は2023年12月、コスモエネルギーHD株式を旧村上ファンド系であるシティインデックスイレブンスら3者から1053億円で取得しました。岩谷産業が提出した大量保有報告書には、保有目的に「水素事業の協業に向けて関係性を強化するため」と明記されています。

コスモ株式の取得費用は借り入れでまかないました。そのため、岩谷産業の有利子負債は大きく増加しています。

岩谷産業はその後、公正取引委員会が排除措置命令(※)を行わないことを確認し、2024年3月にコスモ株式を15億円で追加取得します。一連の取引で岩谷産業のコスモの議決権保有比率は20.07%に達し、コスモは岩谷産業の持ち分法適用会社となりました。

※排除措置命令:公正取引委員会が独占禁止法上の違反行為を除くために行う行政処分

岩谷産業とコスモは水素事業で結びつきを強めてきました。2022年に水素事業での協業に合意し、水素ステーション事業や水素設備のエンジニアリング事業などを共同で運営しています。岩谷産業はより高いシナジーを狙い、コスモ株式の取得に至りました。

岩谷産業とコスモは2024年4月に資本業務提携を締結しました。コスモが持つサービスステーションネットワークの活用も視野に、水素サプライチェーンの構築を目指します。

なお、持ち分法によるコスモの業績の反映は2025年3月期第1四半期から開始されます。岩谷産業の持ち分法による投資利益は2024年3月期に大きく増加していますが、これにはコスモ取得にかかる暫定的な負ののれん相当額が含まれます。

【岩谷産業の営業利益~経常利益(2024年3月期)】
営業利益:506億円(+106億円)
・営業外収益:183億円(+94億円)
・うち持分法による投資利益:101億円(+92億円)
・営業外費用:28億円(+8億円)
・経常利益:662億円(+192億円)
※()は前期比
※持分法による投資利益には暫定的な負ののれん相当額93億7800万円を含む

出所:岩谷産業 決算短信

文/若山卓也(わかやまFPサービス)