とは言え、「自動移換の人数が多いことは非常に問題」とはNPO法人確定拠出年金教育協会理事兼主任研究員の大江加代氏。原因としては、移換して持ち運ぶメリット、自動移換のデメリットの周知不足、これには企業から従業員への説明不足もあると考えられるといいます。また、「手軽に手続きができるようスマホなどによるデジタル化も一層求められるでしょう」と大江氏。
24年は2つの改正でさらに注目度が高まる
iDeCoのオンライン加入は30運営管理機関で可能となっており(2023年3月末時点) 、新規加入者の3割超 がネット申込という状況もあります(同11月)。とは言え、いまだ道半ばであり、手続きの煩雑さは否めません。この点に関しては、加入申込時に必要な事業主証明書の添付が今年12月から不要になることが決まっています。会社に証明書の発行を依頼するハードルがなくなる心理面と、デジタル化がさらに進めば手軽に手続きが済むという物理面の2つのメリットが期待できるであろう12月以降はiDeCoの新規加入者数がさらに増える可能性があるでしょう。
同じく12月には、公務員や確定給付企業年金(DB)がある企業の多くの会社員拠出限度額が引き上げられる予定です。具体的には現状の1万2000円から2万円 となる予定ですが、こちらも一方で注意点もあります。DBの給付額が非常に充実していて、掛金相当額が2万7500円を超えている場合は iDeCoに拠出できる金額が少なくなったり、掛け金自体が拠出できなくなったりする人も一部で見込まれます。DBが導入されている企業では、既にDB掛金相当額とともにiDeCoの限度額が下がる方にはその旨の通知があったはずですので、自分が当てはまるか否かを確認する必要があるでしょう。
今年度は制度改正の議論を行う年であり、「資産所得倍増プラン」でも取り上げられた「iDeCoの加入年齢の引き上げなども制度改正に向けた議題に上っています」(大江氏)。
既に決まっている改正内容だけでなく、今後の改正の方向性についても押さえておくことは、転ばぬ先の杖となるはずです。当連載ではiDeCoの新規加入者数の月次推移とともに、こうした改正の要点についてもタイムリーに解説していく予定です。