新NISAの5割が個別株に

日本証券業協会の調べによると、2024年2月におけるNISA口座の開設件数は、2023年1~3月の1カ月平均に比べて2.9倍になった。

新NISA制度は2024年1月より開始され、「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の二本柱からなっている。「成長投資枠」では個別株と投資信託の購入が可能であり、「つみたて投資枠」では投資信託を毎月積み立てることができる。2つの枠を合計した年間の購入上限は360万円に拡大され、非課税運用期間も恒久化された。これにより、個人投資家にとって長期的な資産形成がより容易になったといえるだろう。

今年2月、日経平均株価は約34年ぶりに史上最高値を更新した。過去の長期にわたる相場低迷を経験してきた高齢者は、株価が上昇すると「塩漬け株」を売却する傾向が強かった。しかし、最近では株価水準に関係なく、コツコツと株式購入を続ける若年層が新たな投資家層として台頭していると考えられる。


その背景には、いくつかの要因がある。まず、スマートフォンの普及やオンライン証券会社の台頭により、若者にとって株式投資がより身近で手軽なものになったことが挙げられる。インターネット上で簡単に情報を入手し、少額から株式投資を始められる環境が整ってきた。

また、金融リテラシー教育の充実も一因と言えるだろう。学校教育の中で投資の基礎知識を学ぶ機会が増え、若い世代の投資に対する意識が高まってきている。

加えて、長期投資の重要性が広く認識されるようになったことも背景にある。SNSなどを通じて、若者の間で「つみたてNISA」や「iDeCo」といった長期・積立・分散投資の考え方が浸透してきた。株価の短期的な変動に一喜一憂するのではなく、長い目で見て着実に資産を築いていこうとする姿勢が見られる。これらの変化により、若年層が市況に左右されず、計画的に株式投資を続ける傾向が強まっていると考えられる。

成長投資枠での買付額は、2024年1~2月の1カ月平均が1.5兆円と、2023年1~3月の1カ月平均に比べて3.3倍、つみたて投資での買付額は、2024年1~2月の1カ月平均が2700億円と、2023年1~3月の1カ月平均の3.0倍となった。

 


そして、NISA買付額のうち成長投資枠の割合は85%、つみたて投資枠の割合は15%となっている。

 

 

さらに、成長投資枠での買付金額のうち、株式の割合は59%と、投資信託の41%を大きく上回っている。

 

NISA全体の買付額で考えると個別株の割合は46%となっており、人気も高いといえるだろう。その中でも、国内の高配当株が人気となっている。これは、昨今の金利上昇とインフレ懸念を背景としたものと考えられる。金利上昇により、債券などの固定収益商品の魅力が高まる一方で、株式市場には割高感が出てきた。そのような環境下で、投資家は比較的割安で、かつ高い配当利回りが期待できる高配当株に注目しているのだ。インフレ対策としても、物価上昇に負けない収益力のある企業の高配当株は魅力的な投資対象といえるだろう。