今年最大のイベントである米大統領選と世界経済見通し

今年は世界的に選挙が目白押しですが、やはり11月の米国大統領選・議会選は市場関係者にとっても外せないイベントです。現時点では民主党のバイデン氏が再選を目指し、対抗馬は共和党のトランプ氏という構図になっています。前回、前々回の大統領選もそうですが、どちらかが勝つかは正確には読めません。そうなると、どちらが大統領になったときに何が起こるかを押さえておくことが重要です。バイデン氏再選の場合、議会がねじれる可能性が高いので、特に大きな変化はなく、マーケットへの影響は限定的でしょう。

トランプ氏が勝つシナリオについては、上下院とも共和党が過半数を握れば、減税期待が高まり短期的にマーケットはリスクオンになる可能性があります。

一方でトランプ政権の復活がリスクとなるのは外交です。国際紛争が多発する中で、トランプ政権になれば米国の関与の低下が懸念されます。ウクライナの支援が細ってロシアが勝利すれば、台湾有事の可能性が高まり国際秩序が乱れるかもしれません。また利下げ圧力や移民排斥はインフレ再燃につながる恐れがあります。

世界経済を見通す上では、米国経済がソフトランディングか、ハードランディングかによっても大きく左右されます。前者の可能性が高いと見ていますが、たとえば、商業用不動産などでリスクもあります。ソフトランディングならば、株価が上値を試す局面はまだまだあるでしょう。足元の日経平均株価は34年前とは違い、バリュエーション的にも企業業績の裏付けがあるので、バブル崩壊のような暴落は考えにくいです。

欧米の金利に関しては低下する方向でしょうが、その下げ幅がどの程度になるかが問題です。一方で日銀がマイナス金利解除後の追加利上げをしないならば、海外金利の押し下げ圧力もあるので、国内の長期金利は0%台後半くらいにとどまると思います。

為替はこの先、円高圧力がかかりますが、大幅な円高には振れず、ドル円は140円前後が中心のレンジになりそうです。リセッションになればFRBの利下げ幅は大きくなり130円を割ってもおかしくありませんが、それでも過去の水準から見れば円安です。

為替のレンジは一昔前に比べたら相当円安に振れていますが、これは円とドルのマネタリーベースでも説明することが可能です。リーマンショック以前、日本と欧米は同程度の通貨供給量でした。しかしその後、日本の量的緩和が遅れた結果、東日本大震災時にはドルの供給量は円の2.5倍もあり、1ドル80円割れを記録しました。しかしアベノミクス以降、日本も量的緩和が進み、足元ではドルの1.2倍くらいまで円が増えています。アベノミクス以前は80~130円が中心的なレンジだったのに対し、今は100~150円です。円高に振れにくいという意味では資産運用にはプラスであり、こうした構造変化も重要なポイントです。