今年のマーケットを振り返ると、市場参加者を沸かせたのが日経平均株価の最高値の更新です。年明け以降、堅調だった先進国株の中でも日本株の上昇が顕著ですが、背景にあるのは円安です。昨年11月から米国の利下げ観測が強まり、長期金利もピークアウトしました。日米の金利差は為替レートの原動力のため、ドル円も140円台前半まで円高に振れました。しかし年明け以降、想定よりも米国の雇用や物価の統計が強いことから、織り込みすぎた利下げ観測の巻き戻しで円安になっています。
今後もこの株高の流れが継続するかは5月に発表されるNVIDIAの決算結果にもよるでしょう。AI関連銘柄とされる同社ですが、日経平均の最高値更新のきっかけになるなど、個別企業の業績がここまで市場全体に影響を及ぼすのは珍しいことです。これまでは期待を上回る業績を上げてきた同社ですが、逆にいつ期待を下回るかがマーケットの調整局面を占ううえでポイントになりそうです。
ソフトランディングに向かうか、世界経済のマクロ動向
マクロ的な注目点はやはり米国の金融政策です。昨年の急速な利下げ観測の背景にはインフレ減速がありました。FRBのインフレ目標2%のターゲットであるPCEデフレーターでも、直近半年だと対前年比で2%程度まで下がっており、現時点では年3~4回の利下げというのがコンセンサスです。
早期利下げ観測は後退したものの、さすがに景気が再加速して利上げに至るという見通しはあまり見かけません。2022年来の急速な利上げを経験して、マクロの景気指標もそれほど強くないからです。主要国の経済見通しでも、今年の米国は経済減速が大勢ですが、あくまでソフトランディングに落ち着くというのがコンセンサスです。
各国の経済見通しで一番弱いのはユーロ圏で0%半ば。特にドイツはロシアに対する経済制裁の影響で天然ガスの調達が困難になり、経済に相当なダメージを受けています。インフレは落ち着いて米国以上に景気がさえないので、ユーロ圏の金融政策は基本的に米国の後追いになりそうです。
中国は経済成長率こそ4%台と高そうですが、不動産バブルが崩壊したことでデフレの入り口に立っています。本当は大胆に金融緩和したいところですが、資本流出に拍車をかけるのでそれも困難です。若年層の失業率は20%を超え、不動産バブル崩壊から長期停滞に陥った30年前の日本と構図が似通っています。