新型コロナウイルスが猛威を振るう中で、世界的に株式市場が急落しています。iDeCoやNISAといった制度が整ったこともあり、ここ数年で投資を始めたという人も少なくないでしょうが、そうした人たちにとって、これほどの相場の下落は初めての経験であるはずです。

こういう時だからこそ、誰かにアドバイスしてもらいたいと思っても、投資に詳しい人がそうそう身近にいるわけでもありません。しかも、最近はネット証券などで投資を始める人が増えていますから、金融機関の窓口に相談することもなかなかできません。

そもそも相談相手として、金融機関は本当に信頼できるのか。そんな不信感を持つ人も、最近は増えてきているようです。昨年大きな話題となった、郵便局によるかんぽ生命保険の不適切販売の問題なども、そうした傾向に拍車をかけてしまったのかもしれません。

「お客さま本位」へと変わりつつある金融機関

ただし最近は、金融機関も大きく変わってきているのは事実です。

皆さんは「顧客本位の業務運営」という言葉をご存じでしょうか。金融業界では今や当たり前のように使われていますが、一般的にはまだ馴染みがないかもしれません。もともと金融庁が銀行や証券会社などの金融機関に求めたことから広がった言葉で、2017年3月にはその指針となる「顧客本位の業務運営に関する原則」も公表されています。

それでは、そもそもどういう意味の言葉で、なぜ金融庁はこのような言葉を掲げたのでしょう? 意味としては文字通り、「お客さまの立場に立った業務の運営」ということですが、あえて言うまでもなく、当たり前のことのようにも思えます。

とはいえ、金融機関が投資信託や保険などの金融商品を販売するに当たって、その販売目標、ノルマなどが設定されてきたのも周知の通りです。

もちろん、営利企業に目標があるのは当然のことかもしれませんが、金融業界においては、顧客の利益がないがしろにされていた面があったのも否定できません。販売手数料を稼ぐために、同じ顧客に何度も売買を繰り返させる、いわゆる「回転売買」が横行してきたのはその象徴でしょう。

そんな背景があったからこそ、金融庁も「顧客本位の業務運営」を求めたわけです。その結果、ここ数年で金融機関はノルマそのものを廃止したり、「顧客本位の業務運営」をどのように実現させるかという方針を、ホームページ上に公表したりもしています。

もっとも、そうした良い意味での変化はメディアであまり紹介されないことが多く、全く知らなかったという人も少なくないでしょう。