<前編のあらすじ>

一馬(35歳)は通勤に時間がかかるため、朝早く起きなければならなかった。昇進したことや妻の在宅業もうまくいっていることから、今住んでいる賃貸マンションから早く引っ越したいと考えていた。ところが、妻の美和子(32歳)は都心から離れても一戸建てに住みたいと言う。口論の末、一馬は「金を出すのは俺なんだよ!」 と暴言をはいてしまった……。

●前編:分譲マンションor戸建て? 意見の違いから夫が妻に放った「言ってはいけない一言

 

不仲のまま義実家へ

それからというもの、一馬と美和子の関係には冷たい隙間風が吹くようになる。

今までだってけんかがなかったわけではない。それでも全く口を聞かなくなるようなことはなかったし、ここまで長引くことも初めてだった。

もしかすると、こういう経験がなかったことが事態を深刻化させているのかもしれない。どうやって仲直りをすればいいのか、少なくとも一馬には分からなかった。

夏が本格的に暑さの牙をむき、お盆休みになっても不仲は続いていた。

毎年、この時期には2泊ほど旅行をするのが通例となっていたが今年はそれもなかった。

もう元には戻れないのではないかという危機感を感じながら、一馬は居心地の悪い家で生活を続ける。そんな折だった。

「……実家に帰るけど、どうする?」

久しぶりに美和子から声をかけられた。

「あ、ああ。行くよ」

状況が好転するかもといちるの望みを請うように、一馬は美和子の提案に応じた。