別の年に受給する場合、退職金とiDeCoはどの順番で受け取るべき?

退職金とiDeCoを異なる年に受け取る場合も注意したい。勤続年数や加入期間に重複する部分がある場合、その重複する部分を減額して退職所得控除額を求める場合があるためだ。

結論から言うと、一時金として退職金とiDeCoを異なる年に受け取る場合、原則としてiDeCoを先に受け取る方が税額は抑えられやすい。退職金の方が減額の対象となる範囲が小さいためだ。

退職所得に該当する収入(退職金やiDeCoの一時金など)を受け取るとき、前年以前から「一定の期間」までにその他の退職所得を受け取っている場合、退職所得控除額は重複する部分が減額される。重複する部分とは、以下のケースだと41歳~60歳の部分を指す。

・退職金の計算期間:23歳~65歳
・iDeCoの加入期間:41歳~60歳
・重複期間:41歳~60歳

また「一定の期間」は退職金で4年間、iDeCoで19年間だ。

・退職金:前年以前4年間に受け取ったその他の退職所得
・iDeCo:前年以前19年間に受け取ったその他の退職所得(※)
※2022年3月31日以前に受け取るものは前年以前14年間

出所:国税庁 退職手当等に対する源泉徴収

上記から、iDeCoの方が減額の対象となる範囲が広いことがわかる。例えば65歳で受け取る場合、iDeCoは46歳以降に受け取った退職所得があると減額の対象となり、退職金は61歳以降に受け取った退職所得があると減額の対象となる。

したがって、より長くさかのぼるiDeCoを先に受け取ることで、退職所得控除額を満額で適用しやすくなる。

例えばiDeCoを60歳、退職金を65歳以降に受け取れば、重複する期間を無視してそれぞれの受給時に退職所得控除額を計算できる。なおiDeCoの受給可能年齢は最短で60歳だ(出典:iDeCo公式サイト iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等

一方、iDeCoの受給を退職金より遅らせると、重複する期間があれば退職所得控除額は減額される可能性が高い。

iDeCoは最長75歳まで受給を遅らせられる(出所:iDeCo公式サイト 加入者の方へ。その場合、56歳以降に受け取った退職金があると、退職所得控除額は重複部分が減額される。

高年齢者雇用安定法から、企業の定年は原則として60歳以上に定められている(出所:厚生労働省 高年齢者の雇用。退職金を55歳までに受け取れば、75歳で受け取るiDeCoの一時金も退職所得控除を満額で適用できるが、法令から難しいと考えられる。

税額をできるだけ抑えたい場合、iDeCoを先に受け取る方が望ましいだろう。