Q2 「オルカン・ブーム」により、日本から海外へお金が逃げていくのでは?

牧野氏
私は若いころ、新興国で仕事をしていたことがあり、実際に「キャピタル・フライト(資本逃避)」と呼ばれる状況を目の当たりにしました。いま日本で起きているような、いわゆるオール・カントリー連動ファンドの人気を、単純に「キャピタル・フライト」の一言でくくることはできません。自国通貨の状況や、自国通貨建ての資産を防衛するという観点でとらえる必要があります。現状は円ドル相場でかなりの円安が進行しています。多くの方が輸入製品の価格上昇がもたらすインパクトを実感しているわけですから、やはり資産防衛の観点から分散投資、通貨の分散は必要です。

ただし、財政破綻にまで至る形でのキャピタル・フライトが現時点で日本においても起きる事態はまだ想定する必要はありません。直近では日本株がこれだけ上昇しているので、個人の投資家も含めて日本株を持たないほうがリスクになると気づいている方もいると思います。

オール・カントリー指数でいえば、少なくとも日本株には5.5~6%くらいのウエイトがあります。先ほど言及した世界のGDPに占める日本の割合(4%)を上回るアロケーション(割り当て)がなされているので、国際分散投資の視点から必ずしも日本株が過小評価になっているわけではありません。

そもそも米国でもグローバル投資が根づくまでには時間がかかりましたし、むしろ現在の米国市場の動向はグローバルから国内へと回帰している可能性もあります。米国の株価に割高感がみられる中で、お金が自然とどの方向へ流れていくのかを考えれば、本来の企業価値よりも割安なメーカーが見直される展開になるように思えます。例えば同じ自動車業界でも、PER(株価収益率)が50倍を超えている米国のテスラと、日本のトヨタを比べるといったことも考えながら、今後は賢明な投資が行われるでしょう。

短期的なお金の流れでいえば、海外に日本の資産が流出しているようにも見えるかもしれませんが、現時点で大きな懸念を持つ必要はありません。