Q1 新NISAのスタートで、オール・カントリーなど海外インデックス投信が空前のブームとなっている背景をどう分析しますか?

牧野氏
過去のバブル期以前と、今回の新NISAとの違いを考える必要があります。例えばGDPで見ると、バブル期には世界全体の16%を日本が稼いでいましたが、現状ではわずか4%台にとどまり、おそらく2030年にかけて3%台に落ち込む見込みです。これは明治維新後や戦後復興期の水準とほぼ同じで、日本の地位が低下している現状を物語っています。

こういう状況で個人が投資を考える際に、第一の選択として必ずしもマザー・マーケットである日本株を選ぶよりも、世界に分散投資したり、勢いのある他国の市場に投資する動きが広がったりするのは当然です。分かりやすいところでは、日本でも多くのユーザーがテスラの電気自動車に乗っています。身近な生活の中でも、米国市場の株価上昇をリードしている企業が果たしている役割を体感できます。例えばMSCIのオール・カントリー指数では米国株が約6割を占めており、グローバル投資といっても米国市場の存在感は群を抜いてます。オール・カントリー連動ファンドへの資金流入は、日本の個人投資家が「投資=日本株」という思い込みから脱して、より視野を広げて投資に臨んでいる現状を反映しています。

振り返ると、銀行窓口で投信の販売が始まった1998年ごろにもグローバル投資の必要性が叫ばれましたが、残念ながら定着しませんでした。日本の投資家がそれほどグローバルにものを見ておらず、「株式投資は危ない」という意識が先行しがちでした。「危険」は英語だとリスクではなくデンジャーと訳されます。ところが最近はリスクに対する考え方がデンジャーからチャレンジ(挑戦)、ひいてはアドベンチャー(冒険)へと、個人投資家の価値観が移っています。このような背景もあり、S&P500やオール・カントリーを通じて世界中の投資機会にアクセスをしてみたいという個人の意欲につながっているのではないかと思います。

今後はグローバルな株式市場を見る上で、各国の成長余力や、その中には昨今言われる「グローバル・サウス」、とりわけインド市場の発展に個人投資家も注目しながら投資が拡大していくでしょう。