独立系・直販系投資信託会社に陰りのワケ
そのうえ岸田内閣は「資産所得倍増計画」を打ち出し、2024年1月からはいよいよ大幅な制度改正を受けたNISAがスタートしました。独立系・直販系投資信託会社にとって、いよいよ飛躍の時が来たと言いたいところですが、これまで一部の人には強烈に支持された「直販」という販売体制にこだわるかどうかによって、会社の命運が左右されるかもしれません。
独立系・直販系といっても、近年では複数の販売金融機関チャネルを持ち、直販比率を下げている投資信託会社もあります。このような独立系・直販系投資信託会社は、今年に入ってからも比較的、資金流出入は安定しているのですが、直販をメインにしている独立系・直販系投資信託会社の中には、資金流入に陰りが見えているところもあります。
理由は「新NISA」です。生涯非課税枠が1800万円まで増額され、制度が恒久化、非課税期間が無期限化されるなど、一気に使い勝手が向上し、多くの人が関心を持っている新NISAですが、口座開設に際しては「1人1口座」というルールがあります。つまりA証券にNISA口座を開設したら、B銀行には開設できないのです。
正しいかどうかは別として、新NISAで資産形成をしようとしている人の中には、「せっかく生涯非課税枠が1800万円まで拡大されたのだから、いろいろな投資商品に分散させたい」などと考えている人もいるでしょう。そうなると、購入できる商品が2、3本しかない独立系・直販系投資信託会社は、NISA口座の開設先として選ばれにくくなります。
金融庁のプログレスレポートで、投資信託会社の理想形であるかのような言われ方をされてきた独立系・直販系投資信託会社が、金融庁主導で使い勝手が向上した新NISAによって苦境に立たされているとしたら、何とも皮肉な話です。
口座開設時にマイナンバーが必要なのだから、それにひもづけて名寄せができるはず。1人複数口座の実現は、ぜひとも検討してもらいたいところです。
参考
・QUICK Money World「eMAXIS Slim『オルカン』の残高急伸、初の2兆円突破」
・金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2020」
・金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2021」
・金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2022」