オルカン2兆円突破は新NISAの影響なのか
この数字を見て、「新NISAのスタートによって、いよいよ本格的に個人マネーが動き出したのでは?」などと安直なコメントをする人もいそうですが、事はそこまで単純ではありません。
投資信託で資産形成をしている、もしくは資産形成に興味を持っている個人の中には、独立系投資信託会社、あるいは直販系投資信託会社という名称を聞いたことがあるでしょう。
独立系とは、銀行や証券会社など大手金融資本の出資を受けていない投資信託会社の総称ですが、大手金融機関との資本関係がないと、運用している投資信託を販売してもらいにくいという問題があったため、自社が直接、個人に投資信託を販売する「直接販売」という形式を採りました。
最近は、金融機関からの出資を受けたり、販路も銀行や証券会社に広げたりしているケースもあるので、かつてのように独立系・直販系ではくくりにくいところもありますが、一般的にはさわかみ投信、セゾン投信、コモンズ投信、鎌倉投信、レオス・キャピタルワークスなどが、独立系・直販系投資信託会社であると認識されています。
金融庁は独立系・直販系投資信託会社をどう見ているか?
こうした独立系・直販系投資信託会社は、一時期、投資信託会社のお手本であるかのように言われてきました。
金融庁が2020年から毎年公表している「資産運用業高度化プログレスレポート」では、資産運用ビジネスにおける課題、論点整理が行われています。
2020年のプログレスレポートでは、
「日本の課題として、国内大手資産運用会社の多くが、販売会社の子会社として設立されたものが多く、金融グループ内において商品提供機能を担ってきた経緯等もあり、グループ親会社や販売会社からの独立性が不十分であることが指摘されている」
「親会社をはじめ金融グループ内において、顧客利益が最優先されるべき資産運用ビジネスに対する理解不足や、短期的な収益重視による顧客目線の欠如から、グループ全体の戦略の中で運用会社の目指すべき姿が定まらず、運用成果に対する意識も不十分であるとの指摘もなされている」
2021年のプログレスレポートでは、
「特定の大手金融グループに属さない独立系資産運用会社においては、自社の目指す姿を明確にし、投資先企業との対話を重視する徹底した企業調査、顧客に対する企業理念やファンドの運用状況の丁寧な説明、資産運用会社自らによるファンドの販売(直販)により、投資先企業や顧客との信頼関係を構築する取組みが見られる」
「独立系等資産運用会社の中には、アクティブ平均を上回る安定したパフォーマンスを実現している社がある」
さらに2022年のプログレスレポートでは、
「アルファの推計値が有意にマイナスとなったファンドは32本。大手資産運用会社のファンドが多くを占め、独立系等の資産運用会社のファンドは見られない」
とあります。このように、これまでの投資信託業界で主流を占めていた大手金融機関系列の投資信託会社の経営、運用、販売体制は望ましくなく、逆に独立系・直販系投資信託会社のそれは理想形である、とでも言うような文言が並んでいます。