絵里さんに送った2つのアドバイス

無理な予算ではないと安堵する絵理さんに、今後の人生を考えて筆者から2つの提案をしました。

1. 社会保険労務士の資格を取って正社員を目指す
2. 実家のご両親と連絡をとる

1人の時間を上手に使い、ゆっくり考えるきっかけになればと思ったのです。

これまでいくつもの企業で総務の仕事をしてきた絵理さん。社会保険の手続きや給料計算が得意で、働く先は問題なく見つけられそうです。ただ、年齢を考えると派遣社員を続けるのは不安です。であれば、社会保険労務士の資格試験にチャレンジし、正社員として働くことを提案しました。

暮らしの安定はもちろんですが、資格を取り実務経験を積むことで、定年後に独立開業も夢ではありません。気になる資格取得費用については、雇用保険の「教育訓練給付制度」を利用できれば、一般教育訓練の講座の場合、費用の20%(上限10万円)が後から支給されます。

思い込んだら一直線の絵理さん。早速、ハローワークで教育訓練給付金の支給対象者になるか確認し、社会保険労務士の通学講座に申込みました。何かしていないと泣きそうだから、気を紛らわすためにもやってみようと決めたのです。

もう1つの懸念は、ご両親との関係です。実家を飛び出してから2回しか帰っておらず、「一度話す機会をもってみては?」とお勧めしました。筆者自身32歳の時に父を亡くしています。会いたくても会えないつらさ。絵里さんには後悔をしてほしくないと思ったのです。

今更どんな顔をして会えばいいか悩んでいた絵理さんでしたが、思い切って弟に連絡をとりました。「一人暮らしをするくらいなら帰っておいで」という両親の声を伝え聞き、それもいいかなと思い始めています。

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しばらくして、絵理さんから「吹っ切れた!」と連絡がありました。なんと、弁護士に相談していることをうわさで聞いた保高さんの母親が怒鳴り込んできたそうです。

「勝手に押しかけられて迷惑したのは息子の方。慰謝料だなんてどういうつもり⁉」と詰め寄られたと言います。いつも面倒なことを人に任せてスルーする保高さんに「こんなところも人任せか……」と呆れて愛想が尽きたのだそう。

「いい思い出だけを心に残し、これからは新しい人生と向き合っていく」と決断した絵理さんは、同年代から見てもかっこよかったです。いろいろあるのが人生。自分にとって大切なことに心を寄せて軌道修正していけば、きっと未来は明るいはずです。

・参考
厚生労働省「教育訓練給付制度」