投資といえば「〇〇の会社の株を買う」といった、特定の企業の株式を買うイメージを持つ人も多いでしょう。しかし、新NISAで投資できるのは株式だけではありません。「ETF(イーティーエフ)」や「J-REIT(ジェイリート)」など耳慣れない金融商品があり、どれに投資すべきか迷ってしまう人も多いのではないでしょうか。

そんな新NISAの投資先のなかで、長期的な資産形成の主役ともいえるのが「投資信託」です。ここでは投資信託とは何か、投資に不慣れな人にでもおすすめできる理由を解説していきます。

 

そもそも投資信託って?

投資信託とは、投資の専門家である「資産運用会社」にお金を任せて、代わりに運用してもらう金融商品です。お金を任せるといっても、何か複雑な手続きを行う必要はありません。基本的には、証券会社や銀行など金融機関で販売されている投資信託を購入するだけ。購入する数量に応じて、どれくらいの金額を運用してもらうか購入者が決められます。

投資家から集まったお金は、数百億円や数兆円といった規模となります。このお金を使ってファンドマネージャーが国内外の株式や債券、不動産や金(ゴールド)などに投資して、その売買に伴う値上がり益や保有による配当収入を得ます。その収益は公平に投資家の持ち分に応じて還元されます。投資による損失が発生した場合も同じように持ち分に応じて投資家が負担します。

株式を例に挙げると、資産運用会社は、投資信託の運用方針に従って、投資先企業を選び出して投資します。その企業が世のためになる商品やサービスを開発・提供することで、売上・利益が増大し、従業員の所得が向上し、投資信託も収益が向上します。

このように、私たちの毎月の数千円や数万円の積み立て投資が、世界の企業を応援することとなり、結果として長期でリターンが戻ってくる構図です。

資産運用会社は、世のためになる企業にじっくり投資するのが基本なので、長期で積み立て続けるお金とは非常に相性がいいのです。

このようにNISAが拡充される狙いには、経済の好循環があるのです。

 

ビギナーにとって魅力的な理由

ここまでは基本的な仕組みを述べてきましたが、次からは投資信託が投資ビギナーにおすすめできる理由を、詳しく述べていきましょう。

【理由1】新NISAで買えるのは選り抜きの商品

新NISAには多くの人が長期で安定的な資産形成をできるよう「つみたて投資枠」という非課税枠が設けられています。投資ビギナーがまず活用を検討すべきは、このつみたて投資枠でしょう。

つみたて投資枠で購入できる商品は、主に金融庁の定めた基準をクリアした投資信託であり、長期で安定的な資産運用をしていくのに向く商品がほとんどです。投資しやすい商品がある程度絞られている点は、投資ビギナーにとって安心して投資できるポイントといえます。

なお、より幅広い商品に投資できる「成長投資枠」でも、長期の資産形成に資するよう、一定の基準が設けられています。まずはつみたて投資枠で慣れていき、ご自身の考え方に合った資産運用会社や投資信託を成長投資枠でじっくり探していくのもいいでしょうし、成長投資枠でもつみたて投資枠と同じ商品を購入するのも選択肢でしょう。

 

【理由2】ある程度はほったらかしでOK

資産形成は長期で行うものであり、相場に一喜一憂せずにコツコツ続けることが大切です。前述したとおり、投資信託は投資のプロに運用をお任せする商品。投資家は株式・債券などの値動きや利回りをこまめに確認して売買する必要はないので、腰を据えた長期投資と相性がよいといえます。

新NISAのつみたて投資枠で購入できるような投資信託をはじめ、長い目で見て安定的な値上がりが期待できる投資信託であれば、商品を購入した後は、ある程度はほったらかしでも問題ないでしょう。ただし最低限、年に数回程度は商品の運用成績や、資産額の推移などを確認したいところです。

【理由3】分散投資が簡単にできる

例えば一つの企業の株式に集中投資したとして、株価が下落すれば、資産を大幅に減らしてしまう事態にもなりかねません。そこで過度なリスクを負わないよう、複数の企業の株式へ投資したり、ほかの国を投資対象としたり、債券など別の資産へ投資したりする「分散投資」という考え方があります。

投資信託は十分に銘柄が分散された商品を1本購入すれば、実質的にさまざまな企業・地域・資産などへ分散投資できます。数多くの商品・銘柄を持たなくてもよいので、投資ビギナーでもリスク管理が比較的しやすいでしょう。

とはいえ投資信託のなかにも「国内株式だけに投資」「米国債券だけに投資」など、投資先がある程度限られている商品もあります。よりリスクを減らして運用したいのであれば複数の投資信託を組み合わせて、いわゆる投資の「ポートフォリオ」を組み、さらに投資先を分散する方法もあります。

【理由4】少額から予算に合わせて始められる

投資信託の特徴として、ほかの金融商品よりも比較的少額から投資できる点も挙げられるでしょう。国内株式であれば一般的に、最低でも数万円程度が必要ですが、投資信託であれば数百円から投資できる商品もあります。

投資ビギナーであれば資金が限られている人も多く、予算に合わせて投資できるのは大きなメリットでしょう。また、投資を始めるのに不安を感じている人が、まずは少額から投資をしてみるのにも向いています。慣れてきたら投資金額を増やしていくアプローチも可能です。

【理由5】毎月積立投資しやすい

積立投資とは、投資先とする商品・銘柄を定期的に、一定金額分を購入していく投資手法です。新NISAのつみたて投資枠では、年に2回以上の投資であれば積み立てとみなされます。

積立投資は毎月行うなど、貯金感覚で気軽に投資可能です。相場が上がっても下がっても買い付けていくことで、購入価格が安定するメリットもあります。

数ある金融商品のなかでも、積立投資を実践しやすいのが投資信託。多くの金融機関では投資信託の積立サービスがあり、新NISAでも利用可能です。投資先の商品を選び、毎月いくら積み立てるかを設定するだけで、以降は投資家の証券口座などを通じて、自動的に投資金額が引き落とされ、商品を購入できます。

 

なお、金融機関によっては積み立てる頻度を毎週あるいは毎日に変えられたり、賞与が支給される月に積立額を増額可能な「ボーナス設定」を利用できたりするなど、投資家のニーズに合わせたサービス展開がされています。

【理由6】購入できる窓口が多い

ここまで投資に不慣れな人でも、投資信託であれば投資にチャレンジしやすいという点を挙げてきました。さらに新NISAであればつみたて投資枠、成長投資枠それぞれに金融庁が購入できる投資信託に一定の基準を設けている点も安心材料です。

では、新NISAの口座はどのような金融機関で開設し、投資信託を購入したら良いのでしょうか?投資信託は銀行をはじめ、信用金庫や郵便局など、幅広い金融機関で取り扱いがあります。しかし、投資信託の積立自体は様々な金融機関で可能ですが、新NISAの口座を扱わないところもあるので、予め確認が必要です。また成長投資枠で上場株式の投資もしたいという希望がある場合は、証券会社での口座開設となります。

近年ではネット証券を利用して、インターネット経由で投資信託へ投資する人も増えてきましたが、日常的に利用している銀行の窓口などで購入したい人もいるでしょう。新NISAは普段利用している銀行口座から、自動振替で投資信託を積立てることもできるので、ご自身の利便性にあわせて口座は開設しましょう。

投資ビギナーをはじめ、幅広い人が無理なく継続しやすい環境を整えやすい点も、投資信託ならではのメリットといえます。

【まとめ】NISAでは投資信託から検討してみては?

投資信託は少額から貯金感覚で積立投資でき、ビギナーでも投資先を分散しやすく、リスクを抑えた長期投資に向く金融商品です。

新NISAではまず、投資信託で投資を始めてみてはいかがでしょうか。

(監修/ファイナンシャルプランナー・山中伸枝)