分割でもまだ高いファストリ株 今後の引き下げはある?

ファーストリテイリングは2023年3月、2002年4月以来となる株式分割を実施しました。分割比率は1:3で、従来800万円以上が必要だった投資単位が3分の1となりました。現在の投資単位はおよそ368万円です(2023年11月20日終値)。

株式分割の背景には東証(東京証券取引所)の要請が働いたとみられます。東証は個人投資家が投資しやすい投資単位として50万円未満という水準を設けています。この実現を目指し、最低投資額が50万円を超える上場企業に対して2022年10月に引き下げを要請しました(出所:東京証券取引所 投資単位の引下げに係るご検討のお願い)。ファーストリテイリングの21年ぶりの株式分割はこれを受けて実施されたと考えられます。

ただし分割後もファーストリテイリング株式の投資単位は東証の水準を大きく上回ります。50万円未満とするには7~8分の1に引き下げる必要がありますが、株式分割が直ちに実施される可能性は低いでしょう。

ファーストリテイリングは株式分割に消極的で、1994年の上場以来で5回しかありません。また増資などで株式市場から資金調達したこともなく、かつすでに市場の評価も高いことから、株式に関する施策には関心が低い可能性があります。2023年11月に公表した投資単位の引き下げ方針でも「多面的に検討した上で対処」という従来の説明を繰り返すのみでした(出典:ファーストリテイリング 投資単位の引下げに対する考え方及び方針について)。

多くの個人投資家にとって、当面はファーストリテイリングへの投資は証券会社が提供する単元未満株取引サービスを利用することになりそうです。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)