ファーストリテイリング株式に「カップ・ウィズ・ハンドル」(※)出現の兆しが見られます。2022年前半まで続いた下落トレンドが転換し、2023年6月には3万7000円台を回復しました。チャートは大きなボウル状を描いた後にやや下落が見られ、カップの取っ手を形成する展開となっています。
※カップ・ウィズ・ハンドル(cup with handle):取っ手の付いたコーヒーカップのようなチャート形状のこと。著名投資家ウィリアム・オニールが提唱した。株価がカップの高値を上に抜けると一段高となるシグナルとされる。
【ファーストリテイリングの業績】
売上高 | 純利益 | |
2022年8月期 | 2兆3011億円 | 2733億円 |
2023年8月期 | 2兆7666億円 | 2962億円 |
2024年8月期(予想) | 3兆0500億円 | 3100億円 |
※2024年8月期(予想)は2023年8月期における同社の予想
【ファーストリテイリングの株価(月足、2020年11月~2023年11月)】
ファーストリテイリングは収益性と市場評価性の高さから「JPXプライム150指数」の構成銘柄に選ばれました。
ファーストリテイリングの強さの理由はなんでしょうか。製造アパレルならではの利益率と世界で浸透する「ライフウェア」戦略を紹介します。また21年ぶりに株式分割を実施した背景にも触れてみましょう。
『ユニクロ』『ジーユー』擁する世界3位の製造アパレル
ファーストリテイリングはユニクロやジーユーといったブランドを展開するアパレル企業です。1984年にユニクロ1号店を出店し、現在では世界中に3578店舗(2023年8月)を展開しています。
ファーストリテイリングは代表的な製造アパレル企業でもあります。製造アパレルとは商品を自ら生産する業態を指し、顧客のニーズに沿った商品を展開しやすい利点があります。東レと開発した「ヒートテック」や「エアリズム」といったヒット商品も、製造アパレルだからこそ誕生したといえるでしょう。
高機能衣料は世界でも人気が厚く、コロナ禍で落ち込んだ2019年度を除けば売上高は順調に増加してきました。現在ではファーストリテイリングは業界3位のシェアを持ちます。
【ファーストリテイリングの売上高(2014年度~2022年度)】
【世界の主な製造アパレルの売上高】
1位.インディテックス(ZARA):4兆7000兆円(2023年1月期)
2位.H&M:2兆9300億円(2022年11月期)
3位.ファーストリテイリング:2兆3000億円(2022年8月期)
高い利益率もファーストリテイリングの強みです。製造リスクを引き受けて自ら商品を生産する製造アパレルは、一般的な小売業より利益率が高くなる傾向にあります。売上高ではセブン&アイHDやイオンに劣りますが、営業利益は同水準です。
【主な小売業の営業利益率(2022年度)】
売上高 | 営業利益 | 営業利益率 | |
セブン&アイHD | 11兆8113億円 | 5065億円 | 4.3% |
イオン | 9兆1168億円 | 2098億円 | 2.3% |
ファーストリテイリング | 2兆7666億円 | 3811億円 | 13.8% |
出所:各社の決算短信