KDDIの株価が長期上昇しています。業績も安定しており、純利益は2023年3月期に過去最高を更新しました。翌期も増収増益を予想しており、投資家の買いを誘っているようです。

【KDDIの業績】

  売上高 純利益
 2022年3月期 5兆4467億円 6725億円
 2023年3月期 5兆6718億円 6775億円
 2024年3月期(予想)   5兆8000億円   6800億円

※2024年3月期(予想)は同第2四半期時点における同社の予想

出所:KDDI 決算短信

【KDDIの株価(月足、2020年10月~2023年10月)】

出所:Investing.comより著者作成

KDDIは「JPXプライム150指数」採用銘柄でもあります。構成銘柄は資本収益性と市場評価性を基準に選ばれますが、KDDIは双方を満たし採用されました。

KDDIには投資対象としてどのような魅力があるのでしょうか。設立の経緯と業績および配当金の推移から探ってみましょう。

経営の神様が作ったNTTのライバル

KDDIは「au(エーユー)」や「UQモバイル」などのブランドで通信サービスを提供する企業です。通信事業は戦後しばらく日本電信電話(以下・NTT)による独占が続きました。KDDIの前身となる第二電電は、通信の自由化を目指す電気通信事業法の施行に合わせて設立されます。

第二電電は稲盛和夫(いなもり・かずお)氏を中心に設立された企業でもあります。稲盛氏は京セラの創業者でもあり、組織を細分化し独立採算制を採る「アメーバ経営」で知られます。経営破綻した日本航空の再建にも尽力し、わずか2年8か月で再上場させました。その経営手腕などから「経営の神様」と称されることもあります。

業界の盟主として君臨するNTTに対し、後発でしかも異業種からの参入である第二電電は苦戦するとみられていました。事実NTTのシェアは圧倒的で価格競争力も強く、競争の中心となった移動通信でも支配的な立場が続きます。

これに対抗するため第二電電は他2社の通信会社を吸収し、2001年に社名をKDDIへ変更しました。KDDIは業界2位となり、通信業界はNTTと日本テレコム(現・ソフトバンク)の3社に集約されます。KDDIは音楽配信サービスなどを武器に移動通信でシェアを伸ばし、現在もNTTグループに次ぐ契約数を維持しています。

【携帯電話契約数(2023年9月末)】
・NTTドコモ:8851万件
・KDDI:6517万件
・ソフトバンク:5300万件
※KDDIは沖縄セルラー電話除く。ソフトバンクはPHS除く。

出所:電気通信事業者協会 事業者別契約数

【KDDIとNTTの比較(連結)】

  KDDI NTT
 創業 1984年 1952年
 売上高 5兆6718億円 13兆1362億円
 純利益 6775億円 1兆2131億円
 時価総額  10兆7352億円  15兆8282億円
 従業員の数  4万9659人 33万8651人

※売上高および純利益は2023年3月期、時価総額は2023年11月14日終値時点
※従業員の数は2023年3月末時点

出所:各社の有価証券報告書