中小企業の退職金制度の充実度

定年年齢で比較すれば、大企業に比べて中小企業は、高齢になっても働ける会社が多いと考えられます。では、退職金についてはどうでしょう?

退職給付制度の導入状況

まずは、退職給付制度の導入状況を見てみましょう。

●退職給付制度の有無と退職給付制度の形態の割合

厚生労働省「平成30年就労状況総合調査・退職給付制度」と東京都産業労働局「令和4年版中小企業の賃金と退職金事情」「平成30年版中小企業の賃金と退職金事情」より筆者作成

中小企業は、退職金を一括でもらう一時金タイプの制度を導入している企業が大半であることが分かります。また、大企業に分類される企業に比べ退職給付制度がない会社の割合がかなり多くなっています。従業員規模が多い会社ほど退職金が充実しているという実態が見えてきます。

ただし、中小企業のデータは令和4年度のものですが、大企業のデータは、平成30年以来まだ新しい統計が発表されていません。そこで、括弧内に同じ平成30年度の「中小企業の賃金と退職金事情」の調査結果を掲載しています。5年前のデータと比較すると、退職金と企業年金を併用する企業がわずかに増えていますが、「退職金制度なし」の企業も増えていることがわかります。

退職金や企業年金のモデル金額

では、中小企業に定年まで勤めた人は、どれくらいの退職金や企業年金をもらうのでしょうか。「中小企業の賃金・退職金事情」に掲載されているモデル退職金額を見てみましょう。

●定年時のモデル退職金

東京都産業労働局「令和4年版中小企業の賃金と退職金事情」「平成30年版中小企業の賃金と退職金事情」をもとに筆者作成

モデル退職金とは、学校を卒業してすぐに入社した人が、普通の能力と成績で勤務した場合の退職金水準です。

モデル退職金において、退職金を一括でもらう一時金形態の制度しかない企業では、大卒でも1000万円を下回る金額になっています。こちらのデータも、平成30年度における厚生労働省の退職金額の統計データを比較するため、括弧内に、「平成30年版中小企業の賃金と退職金事情」の数字を入れています。

厚生労働省が平成30年に発表した退職給付額の平均は、高校卒(現業職)1159万円、高校卒(管理・事務・技術職)で1618万、大学卒(管理・事務・技術職)で1983万円となっています。退職給付種類別では、一時金のみの平均は、高校卒(現業職)717万円、高校卒(管理・事務・技術職)1163万円、大学卒(管理・事務・技術職)1678万円。一時金・企業年金併用では、高校卒(現業職)1650万円、高校卒(管理・事務・技術職)2313万円、大学卒(管理・事務・技術職)では、2357万円という結果でした。

平成30年度で比較したとき、高卒の場合は、大企業よりも中小企業のほうが退職金額は高い場合もありました。しかし、令和4年度は、全学歴で中小企業の退職金額が減っています。

統計を比較してみると、日本の0.3%にあたる大企業の退職金が、日本の退職金の平均額を押し上げている現実が透けてみえます。実際は、99.7%という圧倒的多数の中小企業に勤めるサラリーマンの退職金事情はかなり厳しい状況になっているのかもしれません。