市場との対話 - FRBは実施政策

「市場との対話」とは、FRBが市場の意見や反応を理解し、同時に市場がFRBの政策についての考え方や具体的な実行方法について理解することをいいます。

具体的には、FRBが市場の反応を前提に、一定の政策実施を市場に伝達することです。その背景にある考え方は、「透明性」と「予測可能性」です。

伝達の方法としては、
・連邦公開市場委員会(FOMC)の声明文
・経済見通しの公表
・議事要旨の発表
・議長記者会見・議会証言
などがあります。

こうした情報を伝達する中で、FRBの経済情勢の認識や金融市場の現状、将来認識を市場と共有し、市場の安定化を図りながら金融政策の効果を高めることを目指しています。

市場との対話 - フォワードガイダンスで見通しを共有する

中央銀行が表明する「フォワードガイダンス」もこの範疇(はんちゅう)に入ります。

フォワードガイダンスとは、金融政策に関する「将来(フォワード)」の「指針・方針(ガイダンス)」という意味です。中央銀行が、一定の金融政策を実施する期限や、金利見通しなど、将来にわたる金融政策の方針を市場に示すことで市場の予想を安定的に導き、市場の安定化を促進する手段です。

例えば、FRB以外では日本銀行が、2013年1月以来、2%の物価目標を掲げて政策運営していますが、この2%目標とは一度でもこの水準に達するまで、という意味ではありません。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率が「安定的に2%を超えるまで」マネタリーベースの拡大を継続すると決めており、「オーバーシュート型コミットメント」といわれます。

このように一定の時間軸を持たせることが、フォワードガイダンスになります。「安定的に超えるまで」という、金融緩和策維持の時間軸を設定することで、緩和策の安定・強化につなげる狙いがあります。

FRBについても、FFレート(フェデラル・ファンド・レート)※1 の0%〜0.25%のレンジへの誘導(実質ゼロ金利)政策を、「しばらく(for some time)続ける」から「長い間(for an extended period)続ける」など表現を変更したり、その後はゼロ金利政策の期限について「少なくとも2013年半ばまで」へと変更したりするなど、様々な試みが実施されてきました。

※1 FFレート
FFはフェデラル・ファンド(Federal Funds)の略。FRSに加盟する銀行は、連邦準備銀行に一定額を預け入れることが義務付けられている。この資金が不足する加盟銀行は、他銀行に無担保で資金を借りて預け入れる。この際に適用される金利がFFレートと呼ばれる。

最近では、インフレ高進に対抗するための利上げについて「利上げ幅」や「利上げの最終到達点(ターミナル・レート)」がフォワードガイダンスになっています。

こうした政策は、金利政策のような従来の金融政策とは異なるという意味で、「非伝統的金融政策」と呼ばれます。FRBのフォワードガイダンスは、世界の金融市場に大きな影響を与えます。