猛毒と化したウェスチングハウス 経営危機のきっかけに

順調だったウェスチングハウスが傾きだしたのは2016年です。原子力発電所の建設を手掛けていたストーン・アンド・ウェブスターの買収がきっかけでした。

ストーン・アンド・ウェブスターでは米国原子力発電所4基の建設が進行していました。しかし想定よりも建設コストが大幅に増加し、巨額損失が避けられないことが判明します。2016年12月には東芝本体にも数千億円規模の損失が発生する可能性について発表しています。寝耳に水の発表は市場に衝撃を与え、東芝株式は大きく売り込まれました。

【当時の東芝株式(日足終値、2016年1月~2017年3月)】

出所:Investing.comより著者作成

ウェスチングハウスは2017年3月、再建を断念し破産を選択します。東芝はウェスチングハウス破綻に関連する損失として1兆2400億円を計上し、全体でも9600億円以上の純損失となります(2017年3月期)。利益剰余金の大幅な減少を主因に株主資本が約8800億円も失われ、5500億円を超える債務超過に転落しました。2015年に露呈した不正会計問題もあり、東芝は存続が危ぶまれる事態に陥ります。

【当時の純損益(2013年3月期~2017年3月期)】

出所:東芝 決算短信より著者作成

東芝は2017年12月に約6000億円の増資を実施し、債務超過を解消します。これにより当面は上場を維持することに成功しました。しかしその後は一転して上場廃止へと歩みを進め、70年にわたる上場の歴史に幕を下ろすことになります。