最優先で確認すべきは「年金額」と「貯蓄額」

ただ、そもそも親に貯蓄がなければ、想定外の支出に対して、親のお金で対応することができません。ですから、親とお金の話をする時に優先して確認したいのは、まず親の年金額と貯蓄額です。

筆者の場合、親の年金額は遭難事故以前から把握していました。「年金受給者の年金関係の書類を見てみたい」という職業柄の欲求があったためです。ただ、年金の書類を見てみたいという動機を持つ人は私のようなFPくらいでしょう。

子の立場からすると、唐突に「ところで、年金額や貯蓄額っていくら?」などと聞くのは気が引けるでしょう。親からも「いきなりお金の話なんて、どうしたの?」と思われ、変な空気が流れるかもしれません。

“自然に”会話を切り出すテクニック

親とお金の話をする時は、変に誤解を生んで不信感につながらないように、親のお金のことを知ろうと思ったきっかけや理由を添えて、詳しい金額を教えてもらってください。

例えば、「もしもの時に備えて、何か医療保険に加入してる?」など、保険の話題から切り出し、「保険で対応できない支払いに備えるため」と目的を伝えてから年金額や貯蓄額を聞くと、会話が成り立ちやすいかもしれません。

あるいは、年金額を聞けたら、親の高額療養費の上限額を一緒に確認するのも良いでしょう。高額療養費の上限額は、厚生労働省保険局の資料『高額療養費制度を利用される皆さまへ』に、①70歳以上の方、②69歳以下の方という形で記載されています。

貯蓄額が正確に分からない場合は…

一方、親が口座を複数持っていると、自分自身でも貯蓄額を把握できていなかったり、夫婦それぞれの貯蓄額を秘密にしていたりするケースが珍しくなく、全体像を把握するのは難しいかもしれません。

この場合、年金額だけが信頼できる情報となりますが、年金額だけでも知っておくと、親の普段の生活レベルと年金額を比較して、「家計に余裕があるかないか」を判断できます。

現在の生活レベルを見て、年金だけでは生活できそうにない出費をしているのであれば、家計改善など対策が必要かもしれません。家計改善の対策が必要なくとも、心配が不要であることが分かれば、子も安心できます。