金を資産ポートフォリオに入れるべき?
前述した金の特性を踏まえたうえで、資産ポートフォリオに入れた方が良いのかどうかを考えてみたいと思います。
金の魅力
金は「資産のラストリゾート」と言われます。理由は、金という物質そのものに価値があるため、株式や債券、あるいは現金などのペーパー資産に比べて、信頼度が高いからです。
債券や株式は、それを発行している企業や政府が財政破綻したら、単なる紙切れになりますが、金の場合、こうした信用リスクとは無縁です。そのため、前述したような金融危機が生じた時に金が買われるのです。
また、戦争などの有事に強いのも、金は世界中どこに持って行っても、世界共通の価値があるからです。たとえば日本で戦争が起きた時、金を持って戦火から逃れ、たとえば米国でその金を売却すれば、簡単に米ドルを手に入れられます。これだけ高い信用力を持っているため、世界中の中央銀行は外貨準備の一部に金を保有しているのです。
ちなみに日本銀行が保有している金の量は846.0トン(2023年6月時点)で、外貨準備の4.2%を占めています。ちなみに世界各国の中央銀行で、最もたくさんの金を保有しているのは米国で、その量は約8133トンにもなります。
金の懸念点
上記のように見ると、個人の資産ポートフォリオにも金を入れる価値があるのではないかと思いがちですが、金をポートフォリオに組み入れると、ポートフォリオ全体の運用効率が下がります。理由は、株式と違い、金は何も生み出さないからです。
株式の場合、企業業績が向上すれば配当が増えます。ところが金の場合、単なるモノですから、そこから配当や金利は発生しません。金の運用収益は、その価格が値上がりすることで得られるキャピタルゲインのみなのです。
もちろん昨今のように、値上がりが続けば良いのですが、いつまでも値上がりし続ける相場商品など、この世にひとつもありません。つまりいつかは値下がりします。
価格が下落した時、株式なら配当金があるので、時間をかければ株価の値下がりを配当によってカバーできます。しかし、金の場合はそのようなことはできません。基本的に金は投資商品ではなく、投機商品なのだということを理解してください。
確かに、金そのものの価値はあるのは認めます。が、金を抱えて国境を超えなければならないほど、今の日本は軍事的緊張状態にあるわけではないし、次々に金融機関や企業が倒産したり、ハイパーインフレになって円が紙切れになるほど、通貨に対する信用力が後退したりしているわけでもありません。
少なくとも、個人が資産ポートフォリオの運用効率を下げてまで、金を保有するメリットはないように思えます。