「金に関するワシントン協定」で金価格が回復
2000年代に入ってから、金価格は徐々に回復し始めました。その理由は「金に関するワシントン協定」で、1999年9月に公表されました。
内容は、欧州中央銀行(ECB)と欧州各国中央銀行14行が、米国ワシントンに集まり、中央銀行の保有金売却や、金の貸与ならびにデリバティブ取引に制限を設けたというもの。要するに、市場に売り出される金の量を根本から締めてしまったのです。これによって金市場における需給関係が劇的に改善しました。
その後、2001年の米国における同時多発テロと、その報復とも言うべき米国による対テロ戦争、2007年のサブプライムショック、2008年のリーマンショック、2010年の欧州ソブリン危機というように、海外では立て続けに金融危機が勃発。それによって金価格はさらに上昇しました。欧州ソブリン危機が落ち着いた2013年、金の国内小売価格は1グラムあたり5000円台まで上昇したのです。
国内金価格と為替レートの関係
ところで金は、海外から輸入したものを日本国内で小売りされる輸入品なので、その国内小売価格には為替レートが影響します。つまり、海外の金価格が動かなくても、為替レートが円安に振れれば、国内小売価格は値上がりします。円高になればその逆です。
アベノミクスがスタートする直前、2012年12月時点のドル円は、1ドル=80円前後でした。それが2015年6月に1ドル=125.85円まで円安が進みました。
この間、海外の金価格を1年の平均値で見ると、2012年が1トロイオンス=1668.86ドル、2015年が1159.94ドルというように30.49%も下落しました。
しかし、一方で国内金価格を年平均で見ると、2012年が1グラム=4321円で、2015年が4564円というように、若干ではありますが、値上がりしました。国内金価格は円安の恩恵を存分に享受したのです。
また、2022年中を通じて、国内金価格は大きく上昇しました。その原因も円安です。2022年1月の1ドル=115円から同年10月の151円まで大幅に円安が進むなか、海外金価格の月平均は、1月の1トロイオンス=1816.77ドルから、10月は1664.45ドルと若干安い展開だったのが、国内金価格の月平均は、1月が6755円で、10月が7920円まで値上がりしたのです。
このように、国内金価格を見るうえで為替レートは切っても切れない関係にあります。ある意味、外貨建て金融商品的なものと考えられるのです。海外金価格の動向次第でもありますが、為替レートが大きく動く局面では、金そのものの価格変動以上に、為替レートの値動きから受ける影響が大きくなります。