成長投資枠に制約ができた背景とは?

しかし、一般NISAがなくなると困る人たちがいたのも事実です。一般NISAが廃止になれば、一般NISAの口座を通じて買い付けられている、かなりの金額の株式が売られる恐れがあります。

大量の売りが出てきたら、株価は下がりますし、せっかく一般NISAの口座を通じて投資したいという理由で入ってきた資金が、抜けてしまう恐れもあります。

新NISAが2024年1月からスタートするにあたり、一般NISAを引き継ぐ形で成長投資枠が設けられ、かつ年間投資上限額が240万円まで倍増された背景には、上記の理由で一般NISAの廃止を懸念する証券業界に対する忖度がありました。

とはいえ、以前、制度設計に失敗した一般NISAと、ほぼ同じ内容で成長投資枠をスタートさせたら、間違いなく一般NISAの二の舞です。

それをどうしても避けたい金融庁としては、少なくとも成長投資枠で購入できる投資信託には、一定の制約を付加したかったのでしょう。それが今回、「成長投資枠で購入できる投資信託1000本リスト」の発表につながったと考えられます。

制約への解釈には多くの議論も

成長投資枠で購入できる投資信託のうち、そこから除外されるのは、高レバレッジ型、ならびに毎月分配型です。これは新NISAの概要が決まった時から言われていたことですが、その解釈を巡って業界内ではかなり議論が錯綜したようです。

高レバレッジ型とは、ブル・ベア型のように、デリバティブを駆使し、基準価額の騰落率が、ベンチマークに対して2倍、あるいは3倍の倍率で連動するレバレッジ型の投資信託を指しているのだと思われますが、金融庁はこのタイプの投資信託を排除するに際して、デリバティブを使用する場合は、為替変動リスクを抑えるなどリスクヘッジ目的に限定するとしました。

ただ、株式先物取引や債券先物取引、あるいは各種オプション取引は、リスクヘッジ目的だけでなく、ファンドの運用効率を高めるのに用いられることもあります。

たとえばインデックスファンドでも、インデックスを構成する全銘柄を組み入れようとすると、コスト面で不利になるため、個別銘柄の代用として、各種先物取引やオプション取引を用いるケースがあります。

それさえも認められないとなると、中にはかなりの数のファンドが、成長投資枠に適合しない投資信託会社も出てきてしまいます。