高額療養費の対象外

前項で紹介した高額療養費は、「食費」や患者の希望によってサービスを受ける「差額ベッド代」「先進医療にかかる費用」は対象とはなりません。差額ベッド代の正式名称は「特別療養環境室料」です。

通常、入院すると6人部屋に入ります。6人部屋では別途費用はかかりませんが、1~4人部屋を希望して移動すると料金が発生します。

払わなくてもよいケースがある

出典:厚生労働省「第422回中央社会保険医療協議会総会・主な選定療養に係る報告状況」令和元年9月

個室に入った場合でも、差額ベッド代がかからないケースがあります。厚生労働省の通達では以下のケースでは、病院は差額ベッド代を請求してはならないと示されています。

・患者が同意書にサインしていない、あるいはサインをしたとしても同意書の説明内容が不十分な場合
・大部屋に空きがない場合や、患者の治療上の必要性により差額ベッドを利用した場合

つまり、希望して同意書にサインをした場合は、支払いが必要になるということです。短期間の入院ならともかく、もし長期入院となったら、高額な請求書を見て驚くことになりかねません。ときどき、「高齢の親が入院して個室を希望している。でも、そんな経済力はない」と頭を抱える子世代に会うことがあります。

本人が支払えなければ、入院保証人となった家族が支払うことになります。家族に負担をかけないよう、自身に支払い能力があるのかどうか、資産状況に加えて民間保険や共済に加入している人は、入院特約の有無や保証内容を調べて、信頼できる家族らに伝えておきましょう。

●第2回(加入は必要? 相続対策になるってホント? 「生命保険」の基本をおさらい)では、シニアが民間保険に入る必要性の有無や相続時の非課税限度額など、生命保険の仕組みについて解説します。

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