理由②短期投資は「ゼロサム」、長期投資は「プラスサム」
株式などリスク性資産への投資では、短期投資よりも長期投資が有利になりやすい理由が他にもあります。
短期投資で儲かることもありますが、誰かが儲かれば他の誰かが損をするのが短期投資です。なぜなら、株式などの「価格」は短期間で変化しますが、「価値」は短期では変化しないからです。通常、企業価値は短期間では変わらないのです。
短期投資は「価格」を取引するだけなので、安値で買って高値で売った人は儲かり、その相手方は損をするわけです(売買が成立するためには必ず相手が必要です)。
儲かった人と損した人の損益を合計するとゼロなので、短期投資は「ゼロサム・ゲーム」を繰り返しているわけです。いや、買い手・売り手とも売買コストを支払うので、より厳密にはマイナスサム・ゲームともいえます。
これに対して長期投資は、企業が時間をかけて積み上げた付加価値の一部を、リスクテイクの見返りに投資家が受け取るものです。より専門的には「リスクプレミアムを積み上げる」ということです。
●図2 長期投資と短期投資ではリターンの源泉がまったく違う
株式会社は株主から調達した資金を元手にビジネスを行い、付加価値を生み出そうと努力しています。ところが必ず儲かる(リスクがゼロの)ビジネスはごく一部を除いてありません。企業は常にリスクと対峙しているわけですが、残念ながら失敗して倒産に追い込まれることもあります。
倒産すればその企業の株式は紙クズ同然ですが、ビジネスがうまくいって付加価値を生み出すことができれば、その企業は利益をあげ企業価値が上がります。資金提供というリスクテイクの見返りに、株主(投資家)が配当や株価上昇という形で果実を受け取る「プラスサム・ゲーム」が長期投資なのです。
私は短期投資を否定するつもりはありません。やりがいもありますし面白いと感じる人も多いでしょう。相場観を養うこともできます。
ただし、短期投資はゼロサム・ゲームであること、そもそも長期投資とはリターンの源泉がまったく違うことをよく理解した上で取り組むことが重要です。
一方、長期投資はプラスサム・ゲームですが、企業が対峙するさまざまなリスクを株主も負うことに他ならないので、より多くの企業に投資してリスクを分散することが肝心です。次節以降では長期投資の具体的な手法を見ていきましょう。
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