●リスクは投資期間の平方根に比例

ここで、グラフは「平均」を中心に徐々に広がっています。投資期間が長いほどリスク(損益の範囲)も大きくなるわけですが、ここでポイントとなるのが「リスクは投資期間の平方根に比例する」ことです。計算式での説明は割愛しますが、これは標準偏差の定義による特性です。

たとえば10年後のリスクは1年後の√10倍(約3. 2倍)、20年後は√20倍(約4. 5倍)という具合です。期間が10倍になってもリスクは3倍強にしかなりません。一方、先ほど述べたようにリターンは複利効果で加速度的に大きくなるため、年率リターンが5%の場合、10年後のリターンは約63%(5%の約12.6倍)、20年後は約165%(同約33.1倍)です。

このようにリターンとリスクでは特性が異なります。そのため投資期間によって「リスクに対するリターンの大きさ」(リターン÷リスク)が変化するのです。

たとえば投資期間が1年だとリターンは5%、リスクは20%ですから、リスクあたりのリターンは0.25倍です(5%÷20%)。これが投資期間10年だと0.99倍、20年だと1.85倍というように、長期投資になるほどリスクとリターンの関係が改善します。

つまり投資期間が長いほど「リスクを取るメリットが大きくなる」ということです。だからリスク性資産は長期投資ほど有利なのです。

ところで、本章の最初にリスクの定義を説明した部分で「損失こそリスクという考え方もある」と述べました。この点に触れておきたいと思います。

図1の「平均-1σ」は10年後くらいまでマイナスですが、その後はプラスとなっています。このことから投資信託Bのように年率リターン5%、年率リスク20%の場合、10年超なら元本割れの確率は16%未満になることがわかります。

逆に考えると、投資期間が10年を超えると利益を得る確率が84%以上で、投資期間が長くなるほどその確率が高くなるわけです。

確率は低いですが、もちろん10年超でもマイナスになる可能性はあります。投資ですから。といっても、投資信託を売却(解約)しなければ利益も損失も実現しません。含み益・含み損の状態に過ぎないので、その後の値動き次第で利益や損失の額は変化します。資金が必要なときに「値下がりした投資信託を売却しなければならない」などとならないように、資産運用は余裕資金(当面、使う予定がないお金)で行うことが大事です。

何より、少しでも長い期間投資し続けることが成功確率を高めます。本書のタイトルは「40代から始める」ですが、投資は若い人ほど間違いなく有利です。できれば20代、30代から、理想的にはたとえ少額でも子どものうちから始めるのがよいでしょう。