ANA株式はコロナ禍でどう動いた?

創業から絶え間なく挑戦し続けてきたANAですが、新型コロナウイルスほどのチャレンジはこれまでになかったかもしれません。2021年3月期には売上高が急減し、4000億円以上の純損失を計上しました。これは前期までに稼いだ4年分の純利益を吹き飛ばすほどの金額です。

【ANAホールディングスの売上高と純損益】

 

出所:ANAホールディングス 決算短信より著者作成

本業による収益が見込めないため、ANAは当面の運営資金を確保する必要に迫られます。同社は銀行からの借り入れや社債の発行、さらには株式を利用した増資など、ありとあらゆる資金調達を行いました。この結果、同社のバランスシートは肥大化し、自己資本比率は大きく悪化します。

【ANAホールディングスの財務】

 

出所:ANAホールディングス 決算短信より著者作成

【変動した主な項目】

 

出所:ANAホールディングス 決算短信

株式を用いた資金調達は、一般に株価にネガティブな影響を与えます。株式の数が増加し、1株あたりの利益や純資産が低下することが投資家に嫌気されやすいためです。

ANAホールディングス株式においても、増資や転換社債の発行を発表したあとは軟調に推移する場面が見られました。同社がコロナ前の株価を取り戻すためには、増資の懸念が薄れることが重要なのかもしれません。

【ANAホールディングスの株価(日足終値、2020年~2021年)】

 

出所:Investing.comより著者作成

コロナ禍で業績や財務の悪化したANAですが、貨物事業は大きく改善しました。2023年3月期の売上高は3080億円と、2019年3月期(同1250億円)の2.4倍以上も増加しています。人流が途絶える中、ANAにとって貴重な収益源となりました。

【航空事業セグメントの内訳(売上高)】

 

出所:ANAホールディングス 決算短信

ANAは貨物事業をさらに強化する姿勢を見せています。2023年3月には、航空貨物専業の日本貨物航空(NCA)の買収について、同社の親会社である日本郵船と基本合意しました。

貨物事業は一般に景気の変動を受けやすく、コロナ後の展望は不透明ですが、ANAは旅客以外でも収益を確保できる体制作りを目指していると考えられます。