運用報告書に書かれていること

運用報告書というのは、その名の通り商品の運用状況について決算ごとに過去1年どうだったかをまとめたものです。運用報告書には交付運用報告書と運用報告書(全体版)があり、詳細版にあたる交付運用報告書には、過去1年の運用経過だけでなく、組み入れ資産の明細なども書かれています。掲載項目や順序が決まっているので、主な項目と見るべきポイントを解説します。

 

「野村外国債券インデックスファンド(確定拠出年金向け)」の交付運用報告書(2022年5月) 出所:野村アセットマネジメント

(1)運用経過の説明
ここでは、決算前1年間の運用経過がグラフや表を用い説明されています。また、基準価額の主な変動要因及び投資環境について文章で簡潔にわかりやすく示されています。

ぜひ読んでいただきたいのが「基準価額の主な変動要因」です。数行ですが、改めて自分が保有している投資信託の価格変動要因を知ることができます。

例えば、ある外債インデックスの昨年の運用報告書では「外国債券利回りが上昇(価格は下落)したことはマイナスに影響しましたが、主要通貨が対円で上昇(円安)したことがプラスに寄与したため、基準価額は上昇しました。」とありました。

昨年は日本以外の先進国で金利の引き上げの動きがあったことはニュースでよく報じられていましたよね。一方、あまり報じられていませんでしたが、外国債券は「利回り」の上昇が起こり、現地通貨ベースでは外国債券価格が下落していました。「債券の価格は金利が上がる局面では下がる」というセオリー通りの動きをしていたのです。しかし、為替が2022年には1ドル=115円ぐらいだったのが140円に、ユーロも1ユーロ130円から145円ぐらいにと大幅に円安に振れたことで、円ベースでは外国債券の価格はプラスとなり、外国債券投資信託の価格はプラスだったことがわかります。

「基準価額の主な変動要因」をこの1年間聞いたニュースを思い起こしながら読んでいただくと、みなさんが研修会で聞いた「景気」「金利」「為替」といったことが保有資産に与える影響を実感頂けると思います。

費用の項目では、「総経費率」をご覧ください。これまでは投資信託の運用をお任せする時の手数料としては「運用管理費用(信託報酬)」をチェックするのが一般的でしたが、実はそれ以外にも費用として、預けている資産から差し引かれているものがあります。この「その他の費用」は、一般的には信託報酬に比べてそれほど大きくないのですが、「総経費率」で比較する方がより正確なコスト比較となります。

「その他の費用」としてほとんどの投資信託が計上しているのが、監査法人等に支払うファンドの監査に係る費用です。海外の資産に投資する場合は、外貨建て資産の保管銀行等に支払う保管等の費用です。他にも、インデックスなどの指数を使用するための使用料や法令上作成が義務付けられた書類の印刷費用などを運用管理費用に含めるのではなく、「その他の費用」で計上する投資信託もあります。

2024年4月からは、目論見書にも記載することが決まっているので、今後は投資信託のコストと言えば、「総経費率」となっていくと思います。

他にも運用経過として、最近5年間の基準価額などの推移、ベンチマークとの差異、分配金についても確認できます。