長期的に資産形成したいならFXはしない
私はFPになる前に、『主婦がFXで1億円稼ぐ』といった内容の本を手に取り、1年ほどチャレンジしました。結果、会社員時代の貯金の多くをなくしてしまった苦い思い出があります。20代の貯金なので大した金額ではなかったものの、だからこそレバレッジを魅力に思ってしまったのですね。
FXは長期的な資産形成には向いていない
FXとは、日本とアメリカなど2つの国の通貨価値の差を利用して利益を得る商品です。たとえば、1ドル100円のときに100ドル買い、その後1ドル130円になってから売れば、「(130-100)×100ドル=3000円」の利益(為替差益)を得られます(手数料等考慮していません)。逆に、もし1ドル70円になって売却したら、3000円損することになります。要するに、為替の値動きを当てて利益を狙う…そんなイメージです。
つみたてNISAやiDeCoより、メディアによる広告で目にすることが多いFXは、投資初心者の人が興味を持ちやすいようで、セミナーなどでも「投資といったらFXでしょうか?」と聞かれることもあります。でも私は「長期的な資産形成にはFXは向いていないJと答えています。その理由は、FXでは値動きを予想して、短期的に売り買いを繰り返す必要があるから。
資産を育てる株式投資(や株式に投資する投資信託)」とは異なり、「小さな損」と「大きな利益」で、資産を積み上げようとするFXは、資産が増える機会に投じる「投機」手段にあたるからです。
ほかにもあるFXが向かない理由
FXには、持っているお金の25倍まで取引できる「レバレッジ」という仕組みがあり、手元資金が少ない人でも、一気に稼げると感じる人がいるようです。利益を25倍まで大きくできる代わりに、損失も25倍大きくなるのが怖いところ。たとえば、取引用のお金として60万円預けているFX口座で、1ドル120円のときにドルを10万通貨買ったとします。レバレッジを25倍とすると、10万通貨買うために必要な金額は「120円×10万通貨÷25=48万円」となります。もし1ドル118円になったらどうなるでしょうか。たった2円の差で20万円の損失となり、4割以上も失うことに。為替は、いろいろな要因で大きく動くため、 長期的にほったらかしておくなんてできないでしょう。しかも、損がふくらみ一定の水準になると、自動的に保有する通貨が売られる「ロスカット」という仕組みもあり、長期的に持つことも難しいのです。
★FXによる利益には、2カ国間の金利差によって発生するスワップポイントもあります。これは、毎日受け取れる利息のようなものです。
●第2回(「タダでケーキを食べられるし…」と無料セミナーに行く人に待ち受ける“残念な展開”)では、「なんか儲かりそう」で損をしないためのコツを具体的に解説します。
資産形成の超正解100
鈴木さや子 著
発行所 朝日新聞出版
定価 1540円(税込)