自分を世の中の標準や平均で評価してはいけない

ですから、皆さんに考えていただきたいのは、自分がどんな生活をしたくて、いくらくらい必要なのかを考えてもらいたいのです。そして、いったいいくらの資産を持っていて、年金でいくらくらいのお金が入ってくるのか、調べていただいて、それらの費用で自分らしい生活が維持できるか考えてもらいたいのです。

大丈夫そうだなと思うのならそれでいいし、足りないなと心配ならお金を増やす工夫か、生活スタイルを変化させていくことも必要でしょう。この本では、老後のおひとりさま生活には毎月20万円は必要ですとか、70歳までに2000万円用意してくださいとか、そんな乱暴なことは書かないことにします。

生活に必要なお金は人それぞれだからです。

そして、手持ちの金融資産のことも十分考えてもらいたいです。年金だけでは自分の生活費が足りない場合や、怪我や病気で多額の医療費が必要になったとか、家の大規模な修繕をすることになったとか、時に多額のお金がいることもあるでしょう。いざという時に、いつも通りの生活を維持するためには、金融資産があった方がいいです。そして、金融資産は少ないよりは多い方がいい。

リバースモーゲージ(自宅を担保にした融資制度の一種)やリースバック(自宅をリースバック運営会社に売却すると同時に、その会社と賃貸借契約を締結することで売却後も同じ家に住み続けることができるサービス)という形もあるではないかと言われる方もいますが、生活資金が足りないからと、シニアになってから借金をしながら生活をしていくなどというのはナンセンスでしょう。

ただ、誰にでも言えることは、自分の生活スタイルを大切にする。持っているお金を有効に使う、減らさない。特に現役時代の方には、投資などで運用して増やすことも考えて将来に備えていただきたいです。まずはできるだけリスクを最小限にしつつ、お金を増やしていく。そういう工夫をしてもらいたいのです。

また、今後の社会制度の変化や、2022年になってにわかに心配になってきたインフレによる影響もあるかもしれません。金融資産があればそういう将来の不測の事態にも対応できます。

自分の生活スタイルと、手持ちの資産がどのくらいあるのかを考えると、何歳まで働いて収入を得ておきたいとか、年金は何歳からもらうことにするのか、そういうことを決めることにも有効だと思います。

現役時代の方もお金に対して少し余裕があるといいですよね。例えば、ブームがある。みんながやってるから自分もやる。ブームというのは、世の中全体がお祭りみたいな熱狂の渦に巻き込まれるようなもので、後から考えたら、何だったんだろあれ? ということもよくあることです。

ただ、時にはそういうお祭り騒ぎに参加してみるのもいいものです。が、別の時には、自分はきっとこれは楽しめないと思ったら距離を置くのもいい。周りの流れに毎度毎度は付き合わない。ただし、時には流れに身を任せて楽しんでみる。そういうことがらも、できるだけ主体的に判断をして欲しいものです。

ブームだけでなく、普段の生活スタイル、消費のスタイルにも言えることです。みんなが自動車を買うから自分も買う。みんながスタバに行くから私も行く。みんながマンションを買うから無理してでも買う。みんなが生命保険に入るからやっぱり入る。そうやって周りに合わせていくと、お金はあっという間になくなります。それは、企業側のマーケティング戦略にまんまとズッポリはまってしまうことです。

よく、住居費は収入の20〜30%くらいが目安などという人がいます。そんな数字に惑わされる必要もありません。

例えば、アウトドアによく出かける人と、週末も家にいて趣味に時間を使う人では、住宅に対するお金の使い方が違っていいはずです。前者は住宅費はできるだけ抑えて自家用車などに十分なお金を使い、後者は住宅費により重点的にお金を使うべきだと思うのです。

ここでは、人生にとってとても大切なお金との付き合い方を考えつつ、皆さん一人ひとりにとって、使うべき支出はいったい何だろう、金融資産はどのくらい増やそうかと考えてもらいたいと思います。

●第2回(「金運財布」は無意味だが…それでも財布の中を整えるのは“効果あり”な理由)では金運にまつわる噂の真相から、日頃の金銭管理、ひいては資産管理について解説します。

『おひとりさまが知って得する、お金の貯め方・増やし方』

佐藤治彦 著
発行所 ぱる出版
定価 1,540円(税込)