行動ファイナンスの分野では、投資家が海外投資に慎重になる結果、自国資産への投資割合が相対的に高くなる事象を「ホームカントリーバイアス」という。2000年代初頭ぐらいまでは、投資信託の世界でも日本株の「1兆円ファンド」が誕生するなど、ホームカントリーバイアスは確かにあった。
しかし、今はどうかというと、詳しく説明するまでもなく、「海外投資に慎重になる」どころか、むしろ海外資産が圧倒的な存在感を示す。積立投資の浸透に伴い、長期的に上昇が見込める資産として、米国を中心とした海外株式への流入が加速したことは皮肉だが、インデックスファンドが市民権を得た今、この流れはそう簡単に変わらないだろう。
では、個人投資家、とりわけ資産形成層の関心が今後日本株に向かうことはないのか。筆者は株式を通じて企業に投資することの意義や、日本株アクティブファンドの魅力を十分に伝えきれていないことが、個人投資家を日本株投資から遠ざけていると考える。
米国株と日本株ファンドの10年間のリターンに大きな差はない
市場全体に投資を行うインデックスファンドに限定すると、日本株はどうしても米国株に見劣りしてしまう。本連載でも繰り返し言及してきた通り、日本株投資の魅力はインデックスではなく、アクティブファンドや個別株にある。米国ほど株式市場全体に自浄作用が働いておらず、超過収益獲得の機会が多いというのが最大の理由だ。ここで少し例を紹介する。
簡易的な方法ではあるが、高いリスク調整後リターンを継続的に獲得しているファンドを抽出する目的で、今回は筆者が所属する楽天証券で採用している「楽天証券ファンドスコア」を使い、「国内株式」の分類に属するファンドを絞り込んだ。分類平均と市場平均の双方を恒常的に上回る「文句なし」のファンドを抽出すべく、「3年、5年、10年の3期間でスコア最高位の5(分類上位10%以内)または4(同25%以内)」というやや辛口の抽出条件を設定したところ、最終的に16本が残った。
さて、重要なのはここからである。
同様の条件を「米国株式-為替ヘッジ無し」分類で設定・抽出すると、わずか2本しか残らない。さらに興味深いのは、10年間の年率リターンで見た場合、意外にも、この2本と「国内株式」分類の16本に極端に大きな差は見られない。
日本の投資信託市場で米国株が売れ筋になったのは足元5年ぐらいのことで、米国株式市場が他の地域を大きく引き離し、急上昇を続けた時期と重なる。インデックスファンドを中心に米国株投資を始めた投資家は、まだ停滞期も低迷期も経験しておらず、今後数十年単位で資産形成を続ければ、そうした局面に遭遇する可能性があることを認識しておいたほうがよいだろう。