長期投資に向かないファンドの割合

では、純資産総額が50億円に満たない投資信託は、公募投資信託全体の本数のうちどの程度を占めるのでしょうか。なんと、2023年1月時点で約5600本ある追加型公募投資信託のうち、純資産総額が50億円に満たない本数は実に約3600本もあるのです。

金融庁が成長投資枠については、①高レバレッジ、②毎月分配、③信託期間20年未満、のいずれかに該当するものを対象外にする方針を打ち出しているということですが、このような条件を当てはめずとも、純資産総額で足切りをした段階で、既に3分の2に近いファンドは長期投資に不適格と言ってもよいのかもしれません。

さらに言うと、追加型公募投資信託全体のうち約1800本のファンドは、純資産総額が10億円にも満たない状態にあります。ここまで小さくなると、もはや本当に運用されているのかどうかさえ怪しいというのは、言い過ぎでしょうか。

純資産総額による足切りでさえこのような状況ですから、前述した「金融庁が成長投資枠での購入に不適格と考えている条件」を加味したら、成長投資枠で購入できる追加型公募投資信託の本数はさらに減るかもしれません。

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こうした現状を見ると、世の中の記事に書かれているように、運用会社が「個人投資家の選択肢を狭める」などと批判の声を上げているというのは本当なのか、という疑問が浮かびます。

そもそも純資産総額が極めて小さいファンドなどは運用しているだけで赤字になるため、投資信託会社としては繰上償還させたいと考えているはずです。それができないのは、代行手数料が得られなくなる販売金融機関の反対が多いからではないかと考えられます。

販売金融機関からすれば、たとえ純資産総額の規模が小さく、1本あたりから得られる代行手数料が少額でも、本数が増えればそれなりの収益になるものです。

あくまでも推察に過ぎませんが、実は「個人投資家の選択肢を狭める」などと言っているのは、繰上償還によって販売しているファンドの本数が減ると困る販売金融機関なのかもしれません。