実は自動移換だった?
「なぜ移換されたのか?」という問い合わせを事業主経由で受けた時、AさんのM社での資産が何らかの理由で「自動移換」になっているのではないか?と考えました。例えば、次のようなケースでは60歳超の運用指図者であっても、自動移換が発生します。
「Aさんが60歳に到達する直前の59歳数カ月で退職したため、M社での資産が“自動移換”扱いとなっているのではないか?」「Aさんが60歳の定年まで勤務していたとしても、M社の事務ミスで、Aさんの退職時に資格喪失事由を間違えて入力し、M社での資産が“自動移換”になっていたのではないか?」
なお、後者の事務ミスは、この数年で増加しているため、記録関連運営管理機関で注意喚起を促しています。
自動移換を防止する施策が予期せぬ移換のひきがねに
結果的にAさんの資産は、法律に則って処理されていることがわかりました。
少し前の制度改正ですが、2018年5月から「自動移換後移換」「自動移換前移換」という仕組みができました。
「自動移換後移換」は、自動移換者を減らすための取り組みとして、記録関連運営管理機関4社がデータの突き合わせを行い、(すでに)自動移換されている人の企業型DC口座が見つかった場合は、自動移換されている資産を自動で移していくシステムです。
また自動移換を未然に防ぐために「自動移換前移換」という仕組みも導入されました。企業型DCのある企業を退職し、転職先で企業型DC口座が作成されると、本人が手続きを失念していたとしても、自動的に前職の企業型DC資産が移される仕組みです。
その際、厚生労働省の判断で「60歳以降の運用指図者であっても、移換が発生する」形でシステムが組まれました。2017年12月ごろに決定されたものですが、当時は運用指図者も移換の対象、といわれても、「同一事業所要件があるためほぼ関係ない」と頭の整理をしていた記憶がよみがえりました。
それから4年半ほどで状況が変化し、M社の運用指図者だったAさんの資産がS社の企業型DCに移換されることとなったのです。
自動移換を防ぐための仕組みが、予期せぬ移換のひきがねとなっていた、という事例です。