「2040年問題」にどう取り組んだらいい?
やさしく解説する読み物を公開

もちろん、こうした議論は政策的なインプリケーションの検討を主な目的に、経済全体を巨視的に、平均的に捉えての議論ですから、一概に「団塊ジュニア」世代の家計に個別にあてはまるわけではありません。

特に同世代は、未曾有の就職氷河期を経験した上に、就職後も給与が必ずしも従前の世代ほど伸びないような経済・社会環境の下で、「未婚化、非婚化、非正規雇用、パラサイトシングル、共働き世帯の急増等、多様化の進展という点ではフロンティア」(牛窪恵氏の投資信託協会「つみけん」でのプレゼンテーション内容から )(*4)を担ってきたことから、従前の世代のロールモデルをそのまま受け入れず、さまざまな新しいライフスタイルや価値観を見出してきたとも評価されています。

団塊ジュニア世代の個々の家計が老後に向けての資産形成、ひいてはライフプランニングのあり方を検討するにあたって、従前によく提示されていたような何か標準的なモデル (*5)が1つあれば済む、とはおよそ考えられません。

昨年7月12日、そうした家計の多様性のフロンティアになった「団塊ジュニア」世代に焦点を当てて、彼らの老後に向けた資産形成を応援するために、極めて画期的な(短い脚本のように読みやすい)無料でダウンロードできるデジタルブックが発行されたのはご存知でしょうか。投資信託協会による「別冊 つみけん2021報告書第三部 『あなたに世界の成長を届ける』〜大切なのはライフプランニング〜」です(*6)

5人の「団塊ジュニア」世代プラス前後の方々(当デジタルブックでは1967年~1977年生まれを「アクティブミドル世代」と呼んでいます)が、お互いに異なるライフスタイルに基づきながら、自分なりに充実した人生を過ごすことを目的に『ファイナンシャル・プランナー(FP)との会話』を通じて、家計の見直しに取りかかる様子が親しみやすく、平易に描かれています(あくまで仮想で、実在の人物ではありません)。

当デジタルブックの副題には「アクティブミドル世代。さあ、ここから!仕事も投資もカッコ良く。」というメッセージが添えられていることからも、同世代を応援しよう、寄り添おうとする熱意に溢れた読み物になっていそうなのが感じられるのではないでしょうか。

(*4)牛窪恵「団塊ジュニア世代の意識 ーマーケティングの観点からー」(「2041 年、資産形成をすべての⼈に けん引役は団塊ジュニア世代 〜8 つの Actions と 12 のアイデア〜」、投資信託協会、2022年7月12日、https://www.toushin.or.jp/statistics/Tsumiken/hokokusyo/)。
(*5)例えば、総務省が定義する「標準世帯」。因みに大和総研・是枝俊悟主任研究員によると、総務省が定義する標準世帯は現在、総世帯数の5%にも満たないとのこと。是枝俊悟「総世帯数の5%にも満たない「標準世帯」」(大和総研HP・コラム、2018年7月10日、https://www.dir.co.jp/report/column/20180710_010074.html)。
(*6)投資信託協会は、投資者の保護を図るとともに、投資信託等の健全な発展に資することを目的に設立された一般社団法人で、主に投資信託委託会社等を会員とする金融商品取引法上の自主規制機関(https://www.toushin.or.jp/profile/mission/index.html)。筆者は「つみけん2021報告書」を議論した研究会にオブザーバーとして参加。