2022年は投資家の皆さんにとって、最も苦戦を強いられた年の1つとして記憶に残るかもしれません。なぜかと言えば、株式が大きく下落しただけでなく、安全資産だと思われていた国債までもが大きく下落したからです。実際、グローバル株式(MSCI World)が▲17.7%(ドルベース)と大きく下落した中、本来であれば株式のマイナスを補うはずのグローバル国債(FTSE World)は▲18.3%(ドルベース)と株式を超える下落となりました。

このような状況ですから、はリーマンショック以降、しばらく使われてこなかった「想定外」や「分散は死んだ」といった言葉がいろいろなところで運用関係者から聞こえてきました。

一方、「2023年は違う」との意見も聞きます。十分に利上げが行われたことでインフレが落ち着く兆しが見え始めてきたため、ここから先の長期金利は現状維持、もしかしたら下がる可能性もあり、債券投資家にとってみると高いインカム・ゲインとキャピタル・ゲインの両方を獲得できるかもしれない好環境が生まれるといった意見です。実際に足元では債券の投資信託が売れ始めているようです(2023年1月時点)。

でも、本当に債券は今がチャンスなのでしょうか? 少し歴史をひも解いてみながら債券投資を取り巻く環境について確認したいと思います。

確かに米国国債の利回りは高まっているものの……

一口に債券といってもさまざまな投資対象があります。国債や投資適格社債、そして最もリスクが高いのがハイイールド債券等です。ですから、債券と一括りにして捉えるのではなく、それぞれで考えていく必要があります。

確かに国債については米国の10年国債利回りが大きく上昇して4%弱(2022年12月末)になっており、1年前の1.5%に比べれば魅力度は高まっていると言えます。ただし、これはあくまで米ドル・ベースでのこと。米ドル・ベースのリスク水準を維持しつつ、リターンを円ベースに変えるには為替ヘッジをかける必要があります。

足元、長期金利よりも短期金利のほうが高い状態(逆イールド)となっていますので、為替ヘッジをかけると高い利回りのほとんどが為替ヘッジのコストで消えてしまうのです。したがって、米国の10年国債利回りが高いからと言って、債券投資が魅力的になったと考えるのは早計でしょう(もちろん、為替ヘッジをする必要のない米ドル・ベースでの投資家にとっての魅力は高まっています)。