若手、ベテランを問わず、22年に「世間における知名度」よりも「信頼ができる」という評価が高まった要因は、急速に高まったインフレに対応するため、米国をはじめとする主要国の中央銀行が、一斉に利上げに動いたため、世界の債券価格が急落し、株価も下落するなど運用市場の悪化が背景にあると考えられる。運用環境が良ければ、その中で目立って優れた運用成績のファンドに注目すればよい。「世間における知名度」がある会社は、その知名度の高さに応じて幅広い商品の品ぞろえも持っている。商品の品ぞろえが多ければ、その中には、優れた運用成績のファンドも出てくるだろう。

ところが、22年のように、「株式もダメ、債券もダメ、REITもダメ」という市場になると、運用商品の品ぞろえが多くても、パフォーマンスの良いファンドが見つからなくなる。その際に、「知名度」に代わって浮かび上がってきたのが「信頼」だったのだろう。

「信頼」という不確かな手掛かり

では、販売会社にとって運用会社の「信頼」は、何によってもたらされるのであろうか? 調査項目としては、「特長や運用哲学をよく理解している」という項目がある。この項目に対する回答率は、若手が21年は22.1%だったが、22年は28.0%になった。また、ベテランでは21年の32.3%が、22年は37.3%になった。若手もベテランも、少しはポイントを上げているものの、それほど高いポイントではない。22年から新しく候補に入った「歴史がある」という点でも若手が31.2%で、ベテランは33.0%だ。若手は「運用哲学」よりも「歴史」を重要視しているが、ベテランは「歴史」よりも「運用哲学」の方を重視している。ただ、ともに、それほど大きな評価ポイントにはなっていない。

22年の回答では「信頼ができる」というポイントが、その他のポイントを大きく引き離しでダントツの評価ポイントになっている。「信頼」とは、形のない非常に脆い存在といえる。21年末まで上昇を続けてきたマーケットが一気に崩れたのが22年だった。しかも、22年の下落は翌年以降の展開を予測することが難しい停滞期になった。そのような中で、販売会社が頼りにする運用会社を選ぶための手掛かりに何をもって選ぼうとしたのか?

そこで選び取られた「信頼」という不確かなワードは、それこそ「歴史」や「運用哲学」、まして、「知名度」ではない。日ごろ継続的に続いている運用会社との関係性だったのかもしれない。