単純な差額支給ではない、第2の計算式もある!

実は遺族厚生年金から老齢厚生年金相当額を単純に差し引くとは限りません。

先ほどの例のように、夫死亡による遺族厚生年金※1から妻自身の老齢厚生年金相当額を差し引いた額で計算する方法(Aとしましょう)とは別に、「遺族厚生年金の額※の3分の2」と「老齢厚生年金の2分の1」を合計した額から老齢厚生年金を差し引く方法(Bとしましょう)もあります※2

※1 経過的寡婦加算が加算される場合は加算後の額。

※2 遺族が配偶者である場合にAあるいはBの計算方法で計算し、他の遺族(父母・祖父母)についてはAのみとなります。

Bで計算すると、単純に遺族厚生年金から老齢厚生年金相当額を差し引くAよりも実際の支給額が多くなったり、Aで計算すると支給されないと思ったところ、Bで計算することによって支給されることがあったりします。

1つ計算例をお示しします。

夫死亡による遺族厚生年金が105万円、妻自身の老齢厚生年金が110万円だったとします。Aの計算方法だと、105万円-110万円で、妻の老齢厚生年金が遺族厚生年金を超えることから実際の差額支給分は「0円」となってしまいます。

●Bの計算方法による遺族厚生年金

 

しかし、Bの計算方法を用いると、125万円(105万円×2/3+110万円×1/2)を差し引く前の遺族厚生年金としたうえで、その125万円から妻の老齢厚生年金110万円を差し引きます。すると15万円となります。Aの計算方法では全く支給されない計算となっても、Bの計算方法による額で少しは支給されることになり、その結果、実際の遺族厚生年金としては15万円支給されることになります。

妻の老齢厚生年金が夫死亡による遺族厚生年金に近い場合、つまり夫だけでなく妻も厚生年金加入が長く老齢厚生年金が多い場合、Bの計算式を用いることにもなります。Bの計算方法で計算しても差額支給分がないくらい妻の老齢厚生年金が高い場合、遺族厚生年金は支給されません。