ピザ、日用品、さらには医療費まで…「条件によって価格が違う」はいたるところに

これほど顕著な差でないにしろ、ダイナミックプライシングは生活のいたるところにあります。

例えばピザ。我が家はPapa John’sというピザ屋のデリバリーを使います。オンラインで配達オーダーをするのですが、ある時オーダーの情報を全部入れて支払いをしようとしたら、配達先が当時息子が大学に通っていた街(同じカリフォルニアの数時間離れた街で、学生が多く住むエリア)になっているのに気づきました。あらあら、息子のところに行っては大変だと自分のロサンゼルスの住所に直したところ、なんと価格がずいぶんと変わった(高くなった)のです。全く同じピザでも、貧乏学生用と一般家庭用で価格が異なったわけでした。

日用品でもあります。Targetというチェーン店があります。同じ商品でも、田舎街と大都会では異なる値段をつけているのは当たり前。そのうえ、お店での値段とオンラインでの値段も違います。同じトイレットペーパーでも、オンラインで見るほうが、お店の値段より安いのです。ところがさらには同じオンラインで見るのでも、すでにお店に入ってからオンラインで見ると、より高いお店の値段が表示されるそうです。お店の中や近く(50フィート以内)にすでにいる人は、まだお店まで近づいていない人に比べて購入モチベーションがより高いので、高めの価格設定がプログラムされているということでした。

病院で手術を受けるのでもそうです。アメリカは全く同じ手術でも、土地や病院によって大きく値段が異なります。例えばですが、一般的な血液検査をとってみれば、オハイオのある町で$18なのが、テキサスのある町では$443と約25倍の差です(2019年Health Care Cost Institute調べ)。

さらには、同じ都市の中でも大きな値段の違いがあります。ノースカロライナのシャーロットという街の中だけでも、腹腔鏡での盲腸の手術費用が最低で$9678 、最高では$30000以上という差がありました(2018年 Kaiser Family Foundation調べ)。これをダイナミックプライシングと呼ぶかどうかはよく分かりませんが、でもとにかく値段がものすごく大きく変わるのです。

それでも、「これは問題。値段をできるだけ均一にしよう!」というふうには事が運ばないのがアメリカでして、この1月から「患者/消費者が、自分受ける医療措置や手術や薬に関して、あらかじめコストを調べ、比較検討できる」オンラインカリキュレーターツールを普及させる動きが始まりました。つまり、消費者側も気を付けて比較検討しなさいということです。