景気を見通せる?「ドクター・カッパー」の実力

「ドクター・カッパー」という言葉をご存知でしょうか。カッパーとは銅の英名(copper)を指しています。上述のように、銅はさまざまな工業品に用いられることから、その価格が景気の先行きを示すとされ、銅価格のことをドクター・カッパーと呼ぶことがあるのです。

銅価格は、本当に景気の先行きを表すのでしょうか。同じく景気の先行指標としても見られる株価と比較し、実際の値動きをチェックしてみましょう。

IMFによると、1980年以降、世界がマイナス成長に陥った年は2年しかありません。リーマンショックの翌年にあたる2009年と、新型コロナウイルスが初めて流行した2020年です。

【世界GDPの成長率】

IMF「World Economic Outlook Database(October 2022)」より著者作成

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リーマンショックが起こったときの値動きを見てみましょう。リーマンブラザーズの破綻は2008年9月15日で、以降は世界的に株価が急落しました。しかし、銅先物の下落はそれよりも早く、同年7月くらいには下げ始めています。

【銅先物とS&P500(2008年7月1日=100)】

Investing.comより著者作成

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コロナショックではどうでしょうか。こちらでも、やはり銅の方が株式より早く反応しました。

新型コロナウイルスがWHO(世界保健機関)に初めて報告されたのは2019年末のことです。世界的な流行が懸念され、株価は2020年2月後半ごろから下落しました。しかし銅先物は、株式よりひと月ほど早く値を下げ始めています。

【銅先物とS&P500(2020年1月2日=100)】

Investing.comより著者作成

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リーマンショックとコロナショックでは、確かに銅価格は株価より先に下落しました。景気の先行きを図る指標として、銅価格を利用できるかもしれません。

ただし、過信は禁物です。2022年、IMFは当面の経済見通しを3回も引き下げました。マイナス成長こそしていませんが、景気の停滞は明らかです。しかしこの間、ドクター・カッパーは機能しませんでした。株価が年初から下落する中、銅価格は6月ごろまで横ばいで推移し、後から株価に追いつくように下落しています。

【銅先物とS&P500(2022年1月3日=100)】

Investing.comより著者作成

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銅価格は、景気の先行きをある程度反映すると考えられるものの、万能ではないといえるでしょう。過度に信用せず、参考の1つにとどめておくようおすすめします。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。