脱退一時金

確定拠出年金は、老後の資産形成を目的に税の優遇があるため、脱退一時金は原則、受け取れない、とご理解ください。現在は下記の条件を満たす場合に限り、脱退一時金の受給が可能です。
【①iDeCoの場合】
・60歳未満であること
・企業型DCの加入者でないこと
・iDeCoに加入できない者(=掛金拠出ができない者)であること
・日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)でないこと
・障害給付金の受給権者でないこと
・企業型DCの加入者及びiDeCoの加入者として掛金を拠出した期間が5年以内であること、又は個人別管理資産額が25万円以下であること
・最後に企業型DC又はiDeCoの資格を喪失してから2年以内であること

【企業型DCの場合】
②資格喪失し手続きを行う際の個人別管理資産額が1.5万円以下の方
・現在、企業型DC加入者、企業型DC運用指図者、iDeCo加入者及びiDeCo運用指図者でないこと
・個人別管理資産額が1.5万円以下であること
・最後に企業型DCの資格を喪失した日の翌月から6ヶ月を経過していないこと
③資格喪失し手続きを行う際の個人別管理資産額が1.5万円超の方
・現在、企業型DC加入者、企業型DC運用指図者、iDeCo加入者及びiDeCo運用指図者でないこと
・最後に企業型DCの資格を喪失した日の翌月から6ヶ月を経過していないこと
・60歳未満であること
・iDeCoに加入できない者であること
・日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)でないこと
・障害給付金の受給権者でないこと
・企業型DCの加入者及びiDeCoの加入者として掛金を拠出した期間が5年以内であること、又は個人別管理資産額が25万円以下であること

脱退一時金を受給できるのはどんな人ですか?

さまざまな条件のうち、いちばん高いハードルは「iDeCoに加入できない者」の部分です。数度の法律改正により、原則的には公的年金の被保険者であれば、iDeCoの加入者(=掛金拠出ができる)を選択できるようになりました。このことから、脱退一時金を受給できるのは、国民年金の保険料免除者であること、が必要です。

実際、iDeCoからの脱退一時金受給件数(2021年度分)は、1,637件と限定的です。なお、同じ期間の死亡一時金受給件数は1,753件となっています。
※運営管理機関連絡協議会「確定拠出年金統計資料(2021年3月末)」

法律改正で脱退一時金は変わりましたか? 

法律改正により3点、変更になっています。
1)上記③は法律改正により2021年4月から施行されました。iDeCo移換後に脱退一時金の受取が可能なのであれば、移換せずに企業型DCから一時金を受給できることに変わりました。

2)上記①および③の「日本国籍を有する海外居住者でないこと」の部分は、2022年5月から施行されました。外国籍人材が帰国する際には、一定の要件を満たせば、公的年金の脱退一時金を受給でき、帰国時には日本の公的年金制度から外れてしまいます。その結果、DCの要件である「保険料免除者」に該当しませんでした。公的年金の脱退一時金は受給できても、DCの一時金は受給できないというアンバランスな形となっていたため、法律改正が行われ、一時金が受け取れるようになりました。

3)また、①および③の「掛金を拠出した期間が5年以内であること」は、2021年4月以前は「3年以内」でした。公的年金の脱退一時金支給要件が5年に延長されたことを反映して、2年伸びています。

自動移換と脱退一時金は関係ありますか?

11月初旬に「企業年金、手続きせず放置112万人、放置された金額2,587億円」と各種ニュースにも取り上げられたので、ご記憶の方も多いと思います。実は、112万人のうち44%は資産額がゼロ円の人(企業型DCを中途脱退する際、勤続期間が3年未満等で、掛金が事業主返還された)です。さらに35.6%は資産額が25万円未満のため、手続きをすれば脱退一時金を受給できる可能性のある人たちとなります。

従来、脱退一時金の手続きが複雑で分かりにくい面もあったため、前記③のように簡素化する法律改正も行われました。