ゾンビ企業が日本に与える影響
帝国データバンクの属性分析によると、ゾンビ企業は以下の業種や地域に多いとされる。
1. 小売業、運輸・通信業、製造業
2. 東北地方や中国地方などの地域
まずは業種別に見ていく。ゾンビ企業率が最も高い業種は「小売業」で、割合は17.4%。次いで「運輸・通信業」の14.9%、「製造業」の12.9%と続く。
背景として、小売業や運輸・通信業は燃料価格や人件費等の原価を販売価格に転嫁することが難しく、利幅を確保しづらいことが挙げられる。製造業は、原材料価格の転嫁ができない上、他業種と比較して設備投資による債務が大きくなりやすい。
次に、地域別のゾンビ企業率に注目したい。最も高いのは東北地方の16.0%、次に中国地方の13.3%と、いずれも全体の平均である11.3%を大きく上回る。一方、平均を下回っているのは、関東地方の9.5%と近畿地方の9.6%の2つの都市部のみだ。
東北地方の割合が高い原因として、東日本大震災からの復興に伴う資金繰りの支援策や返済猶予措置などによる、借入額の増加が考えられる。また、地方全体に共通する特徴としては「人件費や家賃を安く抑えられる」点が挙げられる。固定費を低く抑えることで、都市部よりも経営状態が悪い企業が存続しやすいのだ。
では、ゾンビ企業が増えると社会にはどのような影響を及ぼすのだろうか。
ゾンビ企業は、自力で営業利益を上げられていない。通常、そのような企業は倒産や解散し、市場から退場していく。しかし、融資が受けやすくなると資金繰りが一時的に改善し、経営を立て直せない企業も倒産を免れることができる。
このように市場の新陳代謝が進まない状態が続くと、本当に資金を必要としている企業に資本が充分に配分されない可能性がある。資本の分配が不十分だと、企業が十分な設備投資などを行えず、業績の向上が見込めなくなってしまう。
つまり、ゾンビ企業が増加すると、日本の経済全体の生産性の低下に繋がりかねないのだ。また、市場にゾンビ企業が多く残っていると配当金や値上がり益が期待できないばかりか、倒産や解散によって資金を回収できなくなる可能性もある。